経団連くりっぷ No.153 (2001年8月9日)

日本ベトナム経済委員会(委員長 宮原賢次氏)/7月30日

ベトナムの経済情勢と今後の課題についてきく

−日本ベトナム経済委員会2001年度総会を開催


日本ベトナム経済委員会では、2001年度総会を開催し、2000年度事業報告・収支決算、2001年度事業計画・収支予算を審議し、承認した。当日は、早稲田大学のトラン・ヴァン・トゥ教授より、ベトナムの経済情勢と今後の発展課題について説明をきくとともに懇談した。

○ 早稲田大学 トラン・ヴァン・トゥ教授説明要旨

  1. 経済情勢
  2. ベトナムは、1992年から1997年の6年間の間に、平均して年9%という高度成長を遂げた。それは、主に、年約13−14%の成長を遂げた工業部門の発展、ベトナム投資額の4分の1を占めた海外からの直接投資ならびにアジア太平洋地域との貿易・投資関係の拡大によるものである。その後、1998年以降、アジア経済危機による環境の悪化、ドン以外の通貨が下がったことによる輸出競争力の減退、ならびに直接投資の減少により経済成長は鈍化した。しかし、ドンが海外市場とリンクしていないことからアジア経済危機の影響が限られた結果、経済成長は鈍化したものの停滞は回避できた。政府がこの5年間、農村開発や貧困撲滅に注力したこともプラスに働いた。
    ベトナム政府は経済発展を促すために、1998年半ば以降、輸出奨励策と規制緩和を打ち出すとともに、1999年には新企業法を制定した(2000年1月実施)。その結果、民間企業の設立が相次ぎ、昨年には民間企業数は約1,500となった。これは前年の4倍という画期的な記録である。2000年5月には外資導入法を改正した。さらに、今年6月には改正土地法を制定し、銀行からカネを借りる際の担保としてこれまでは建物のみが認められていたが、土地使用権も使用できるようになった。

  3. 長期的発展課題
  4. 第1に、農村開発と工業化をリンクすることが必要である。都市と農村の所得格差が拡大傾向にあるが、今後は、農村において情報の普及ならびに教育振興に努めるとともに、労働集約的工業の発展を促進することによって、農村の労働力の工業部門への取入れを図ることが重要である。第2に、直接投資、特に輸出指向型直接投資の誘致が必要であり、そのための政策の実施を徹底させることが重要となる。さらには、IT関連機器分野への投資誘致ならびに政府がターゲットとする新分野への直接投資を奨励するためのインセンティブの供与も考えていくべきである。第3に、ベトナムからの輸出拡大を図る必要がある。近いうちに米越通商協定が締結され、AFTA(アセアン自由貿易地域)も2006年に迫っているが、その結果、ベトナムの製品が海外に輸出されないと意味がない。そのためには、価格や品質の面で競争力をつけるとともに外国市場に関する情報収集、マーケッティングに努めることが重要と考える。


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