経団連くりっぷ No.153 (2001年8月9日)

情報通信委員会通信・放送政策部会(部会長 潮田壽彌氏)/7月24日

通信・放送の新しい関係

−健全な緊張関係と共存関係の確立


情報通信委員会通信・放送政策部会では、技術変化に対応した新しいメディア制度のあり方について掘り下げた検討を行っている。その一環として、ネットリサーチの竹内英次郎代表より、通信・放送の融合問題について説明をきいた。

○ 竹内 ネットリサーチ代表説明要旨

  1. 技術、産業、制度
  2. 技術が変わると産業が変わり、その結果、制度も変える必要が生じる。現行制度を前提としていては、将来展望は困難である。

  3. 変化する技術、産業
  4. 通信の広帯域化、放送の希少電波からの解放により、通信と放送の中間領域が生まれた。通信・放送の融合問題は、「伝送路の共通化」、「放送の通信化」と捉えることで解決の道筋が見えてくる。
    通信、放送は近代国家形成にあたり国家統治のツールとしての機能を担っていたが、国家の役割が変化し、政府の役割も後退したことで、今日では、産業として位置付けられるようになっている。

  5. 融合から生じる問題
  6. 伝送路の豊潤化により、通信、放送双方においてサービスの「設備離れ」、つまり手段からの解放が進んでいる。このような中で、現行の放送法は放送を「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信」と定義し、電波という手段に縛られている。むしろ、放送の本質は、コンテンツにあるので、設備には通信の規制を適用し、コンテンツには、他のメディアと共通の規制を適用するのが最終的な姿である。ただし、そこに至るまでの過程では、「基幹メディア」への非対称規制をはじめとする競争政策を展開する必要がある。

  7. 放送をめぐる問題の焦点
  8. 放送産業においては、伝送路という物流のネックは解消し、いまや製品であるコンテンツの相対的な不足が問題となっている。二次利用などの著作権の問題等、販売のネックを解消する必要がある。放送をめぐる問題の焦点はコンテンツ、販売にこそある。

  9. 通信・放送の新しい関係
  10. これまで情報産業は、放送、通信、情報処理と業界毎に「タテ」割りになっていたが、融合によって伝送路、コンテンツ、端末機器など「ヨコ」の共通化が始まっている。このような中で、伝送路の独占によりコンテンツの提供等に支障が出ないよう、通信と放送とが切磋琢磨しあう健全な緊張関係を保つ必要がある。
    一方、伝送路からコンテンツという一連のバリューチェーンを成長させていく上では、通信と放送は共存関係にある。


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