経団連くりっぷ No.155 (2001年9月27日)

経団連意見書/9月18日

平成14年度税制改正提言

−経済構造改革の実現を目指して


はじめに −経済再生のための税制改革の提案

抜本的な構造改革の断行なくして、わが国経済の成長は困難であり、経団連では、一致協力して、構造改革に向けた取組みを進めていく決意を明らかにしている。
経済構造改革を実現するためには、税制の抜本改革が不可欠であり、経済・社会の変化や商法などの諸制度の見直しに対応して、税制を不断に見直すことが必要である。
そこで、連結納税制度の確実な導入をはじめとする平成14年度税制改正の具体的なあり方について、以下の通り、提言するものである(以下は、提言項目の概要)。

1.効率的な企業経営促進のための税制改革

企業が効率的な経営を進め、経済活性化の礎となるよう、ビジネスインフラとしての法人税制の整備をさらに進める。

  1. 日本型連結納税制度の具体的提案
    グループ経営の定着に対応するよう連結納税制度を平成14年度に確実に導入する。

    [連結納税制度をめぐる具体的論点について]

    1. 連結納税制度導入の対象法人(連結親会社が直接・間接に全発行済み株式を保有する子会社(100%子会社)とする)
    2. 連結子会社(100%子会社は原則として全て連結する)
    3. 寄附金の取扱い(少なくともグループ全体で認められる枠の範囲で損金算入を認める)
    4. 連結グループに新たに加入する場合の適格要件について(加入する子会社の資産の時価評価を原則とするが、一定の要件を満たす場合は、時価評価・課税を要しない)
    5. 租税回避行為を防止するため必要な措置を講ずる
    6. 連結納税導入に伴う一時的な税収減について(連結納税を採用する企業に対して、付加税を課すことは反対)

  2. 多様な経営形態を可能とするための税制改革(LLP・LLCの創設)
    複数の企業が共同してリスクの高い新規事業進出や事業再構築を行うための手段として、米国のLLP、LLCと同種の事業形態を、わが国でも有限責任事業組合契約として認める。

  3. 公正で簡素な法人税制の確立

    1. 欠損金の繰戻し還付・繰越控除の拡充(現行1年繰戻し、5年繰越を、それぞれ2年、10年に延長)
    2. 減価償却制度の抜本見直し(耐用年数短縮等)
    3. 政策税制の見直し(政策目的と税制措置の有効性を不断に検証しつつ見直す)

2.資産デフレ解消のための税制改革

  1. 個人金融資産の活用・証券市場活性化のための税制改正

    1. 申告分離課税の税率引下げ(26%→10%)
    2. 株式の譲渡損失繰越控除(5年間程度)の創設
    3. 株式配当課税の見直し(個人受取配当は20%源泉徴収で完結、法人受取配当は全額益金不算入)

  2. 不動産市場活性化のための税制改正

    1. 不動産の流動化を促進するための流通課税・譲渡益課税等の整理・合理化(登録免許税の手数料化、不動産取得税の廃止等)
    2. 不動産証券化促進税制の拡充(不動産証券化商品にも税率引下げや少額譲渡益非課税制度等、株式同様の措置を適用)

3.経済構造改革を進めるための税制改革

  1. 不良債権・不良資産処理を促進するための税制措置
    (私的整理ガイドラインによる債権放棄・債務免除の法的整理に準じた取扱い)

  2. 商法改正に対応した税制措置

    1. 金庫株処分時の非課税措置(資本等取引としての取扱い)
    2. ストック・オプション税制の拡充(子会社・関連会社の役員・従業員等への拡充)
    3. 電子CPの源泉徴収免除と手形CPの印紙税定額化措置

  3. 財政構造改革と税制
    (特定財源制度については、使途の見直しとともに、受益と負担の関係に留意しつつ負担水準の見直しを行う)

4.社会保障制度の抜本的改革と税制

急速な少子高齢化に対応するため、現役世代にとって過重な負担にならないよう、社会保障制度を総合的に見直す必要がある。

  1. 消費税率の引上げにより基礎年金・高齢者医療の国庫負担を拡充する

  2. 企業年金に係る税制の整備

    1. 特別法人税の撤廃
    2. 確定拠出年金に係る拠出限度額の引上げ

5.地方の自立・活性化を支えるための税制改革

  1. 一層の地方行財政改革の徹底と地方分権の推進
    国と地方の財政的関係を見直し、自立的な歳入の確保の枠組みを築くとともに、地方自治体のディスクロージャーを充実させ、徹底的な歳出削減を行う。

  2. 地方独自課税の適正化(法人のみに偏った課税の是正)

  3. 地方課税の抜本改革(外形標準課税反対)

6.国際租税に関わる問題

  1. 日米租税条約改定への適切な対応

  2. 外国税額控除の拡充

  3. タックス・ヘイブン税制の見直し(企業のグローバルな活動に即した見直し)

以 上

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