経団連くりっぷ No.155 (2001年9月27日)

情報通信委員会(委員長 岸 曉氏)/9月10日

メディア制度のグランドデザインの策定が必要


情報通信委員会では、通信・放送政策部会(部会長:潮田壽彌氏)を中心に、インターネット、放送などの電子メディアについて、環境変化を踏まえた今後の制度的枠組みのあり方を検討しているが、その一環として、東京大学大学院の濱田純一 情報学環長より、今後のメディア制度のあり方について説明をきいた。
なお、当日は当部会が取りまとめた「今後のメディア制度の課題」(中間報告)の審議、政府のIT戦略本部への対応状況の報告、規制改革要望に関する審議等も行われた。

○ 濱田東京大学大学院情報学環長説明要旨

  1. 現在の議論の状況
  2. 現在行われているメディア制度のあり方に関する議論は、通信・放送の融合等の状況を踏まえ、当面の対応として現行の放送制度をどのようにするかに焦点が当てられており、長期的展望に立った制度のあり方が議論されることが少ない。

  3. 放送の文化政策的視点
  4. 放送を中心としたメディア制度を考える場合、利用者ニーズへの対応や競争の重要性は当然とした上で、日本として実現すべき放送サービスについて議論する必要がある。広い意味での文化政策の観点から、日本が発信しようとする情報が何かを明確にしておく必要がある。

  5. 技術的定義から文化的定義へ
  6. 放送は「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信」と、技術に則した定義が行われているため、新しいメディアが出現する毎に、放送か否かが議論される。今後は、放送サービスを通じてどのような日本を実現するのかという視点に立って、放送の定義、放送制度のあり方を考えるべきである。技術的定義ではなく、文化政策の観点から、ある特定のサービスを制度上の放送と位置付け、安定性を保つため社会的な規制を課してはどうかと思う。

  7. 放送の高度化
  8. 放送の周辺サービスが出現しているにもかかわらず、放送のイメージは50年来変わっていない。放送を文化的に定義したとしても、伝統的な放送の価値を高める上で必要なら、放送と位置付けるものもありうる。

  9. 競争の構造と競争形態
  10. 放送においても公正競争が重要であるが、適正な文化的政策を含めた適正な競争のための環境を整備する必要がある。
    放送内部の競争を高めるには、ある程度の規模の事業者間の競争が行われるよう、地域免許やマスメディア集中排除原則を見直し、民間放送事業者が体質を強化できる条件を整備すべきである。また、放送と放送周辺のサービスとの競争ということでは、放送サービスといわれているものの一部を放送として限定し、それ以外のメディアは自由競争とすべきである。


くりっぷ No.155 目次日本語のホームページ