経団連くりっぷ No.155 (2001年9月27日)

1%クラブ会員交流会(1%クラブ会長 伊藤助成氏)/9月6日

「NPOな人々」をテーマに人の流動化を考える


1%クラブでは年2回会員交流会を開催しているが、今回は、社会の期待と関心が高まっているNPOに焦点をあて、企業とNPOの人材面での連携の可能性について、日本NPOセンターの田尻佳史事務局長をコーディネーターとしてパネルデスカッションを行った。交流会にはNPO関係者を含めて160名が参加し、新たな(New)、公益(Public)を担う、組織(Organization)の人材をテーマに人の流動化を考えた。

  1. 企業を退職してNPOへ
  2. パネリストの1人、中西 治氏は難民支援などを実施するNPO、JENで昨年10月より経理担当として働いている。中西氏は外資系の化学製品会社に約30年勤め英文会計を含め会計の実務経験が豊かである。そのため、受け入れたJENの浅川葉子事務局次長は、中西氏が入ることで、政府・国連機関へのアカウンタビリティも高まり、広く一般から寄付を受ける土壌も整備されてきたと述べた。また、企業で培った専門性を強いることなく、組織にあった形で提案できる、中西氏の資質はJENで高く評価されていると述べた。

  3. 企業を休職してNPOへ
  4. 障害者の自立支援を行うたんぽぽの家で働く、富士ゼロックスの北川義一氏は、社員のボランティア組織「端数倶楽部」の活動で知ったたんぽぽの家に本年1月より1年間ボランティア休職を取得して来ている。障害のあるメンバーの生活や芸術文化活動を支援しながら、技術者としての専門性を活かしパソコンのネットワーク環境の整備も手がけている。当初は、マニュアル化されていない仕事や自由に戸惑いを感じたと言う。
    たんぽぽの家の増子大介施設長は、現場は課題だらけで、異なる組織文化の人を受け入れるには、NPO側の組織整備も必要だが、協働により夢と希望のあふれるNPOとしたいとのメッセージが参加者に向けてあった。

  5. 企業人がNPOで活躍するためには
  6. 中西氏から、企業人がNPOで活躍する可能性と秘訣について、以下の発言があった。企業とNPOに共通する役割は「良い品・サービスを適正な価格・品質で提供し、市場の評価を得ること」であり、仕事の進め方や問題解決に使う道具に根本的な差はない。ビジネス界で鍛えられた手法をNPOが取り入れることは重要である。とはいえ、企業とNPOには目的、心象風景、規模、報酬の4つの違いがあり、企業からNPOに転職する際は、この違いを考える必要である。しかし、決め手となるのは目的に「共感」できるかどうかである。
    最後に田尻氏は、長年企業で働いた人がNPOに軟着陸するための研修制度の必要性などを指摘した。


くりっぷ No.155 目次日本語のホームページ