経団連くりっぷ No.156 (2001年10月11日)

輸送委員会企画部会(部会長 横山善太氏)/9月18日

今後の港湾行政の展開

−国土交通省港湾局 鬼頭計画課長よりきく


近年、近隣アジア諸国において国際ハブ港湾の整備が進められるなど、日本の港湾をめぐる状況は変化しつつある。わが国が国際競争力を備えた物流体系を構築するために、今後、ハード・ソフト両面からどのように港湾整備を進めていくべきか、具体的に検討する必要がある。そこで、輸送委員会企画部会では、国土交通省港湾局計画課の鬼頭平三課長を招き、今後の港湾行政の展開について説明をきくとともに意見交換を行った。併せて、今年度の運輸分野における規制改革要望案についても審議を行った。

  1. 鬼頭課長説明要旨
    1. わが国港湾の相対的地位の低下
    2. アジア主要港におけるコンテナ取扱量は1980年代以降、急激に増加している。1980年に世界第4位の取扱量を誇っていた神戸港は、阪神・淡路大震災の影響もあり、現在19位に落ち込んでいる。また、1980年に13位であった横浜港は20位と低迷している。その反面、現在上位を占めるのが香港、シンガポール、高雄、釜山等、アジアの港湾である。リー・クワンユー前シンガポール首相は「島国の経済レベルは、その国の港湾や空港のレベルを超えることはできない」と語っているが、日本の国際競争力とコンテナ取扱量が軌を一にして低下している事実は象徴的である。

    3. 港湾の国際競争力をいかに確保するか
    4. わが国港湾のパッシング(抜港)を少しでも減らし、日本発着の貨物を増やすためには、

      1. 24時間フルオープン化の推進、
      2. 輸出入・港湾行政手続のワンストップサービス化、
      3. 国際水準のコンテナ港湾の適正配置、
      等、国際競争力のあるサービス、コスト水準を実現する必要がある。
      1. については、今年の春闘で、日曜荷役の恒久的実施や年末年始休暇の短縮等を旨とする労使協定が結ばれるなど、一定の前進が見られた。
      また 2. に関しては、2001年度中に、財務省のSea-NACCS(海上貨物通関情報処理システム)と国土交通省の港湾EDIシステム(港湾管理者・港長に係る入出港の行政手続きの電子データを交換するシステム)を接続する予定であるが、今後、港湾諸手続のワンストップサービス実現のため、シングルウィンドウシステムの構築に向けた予算を確保したい。
      さらに 3. については、わが国のGDPに比して大水深バースが不足していることや、大型コンテナ船がますます増加している現状に鑑み、国際コンテナターミナルの整備を進めることが重要であると考えている。

  2. 意見交換(要旨)
  3. 経団連側:
    港湾整備に当たっては、利用者負担が軽減されるよう、常にコスト意識を持って進めてほしい。

    鬼頭課長:
    コンテナ1個あたりの施設利用料を下げるには、より多くのコンテナ船が発着する必要がある。国際コンテナターミナルの整備を進める一方、利用率の低い港湾の非効率的な施設の償却も検討したい。

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