経団連くりっぷ No.156 (2001年10月11日)

国土・住宅政策委員会土地・住宅部会(共同委員長/部会長 田中順一郎氏)/9月17日

経済構造改革の一環として都市の再生を推進

−都市再生本部事務局 岡本審議役よりきく


政府は、本年4月の緊急経済対策に基づき、5月に都市再生本部を設置し、「都市再生プロジェクト」を決定するなど、都市再生に向けた取組みを進めている。そこで土地・住宅部会では、内閣官房都市再生本部事務局の岡本圭司審議役から、都市再生本部の取組みと今後の活動について説明をきくとともに意見交換を行った。当日は併せて、土地・住宅分野に係る経団連規制改革要望案の審議を行った。

  1. 都市再生本部事務局岡本審議役説明要旨
    1. 都市再生本部の設置
    2. わが国の国際競争力に対する評価が急激に低下しており、2001年には26位まで低下した。こうした事態を受け、「日本経済再生の戦略」(1999年2月)や「都市再生推進懇談会の提言」(2000年11月)など、国を挙げて都市再生の問題に取り組むべきとの指摘が数多くなされていた。
      これらを受け政府は、本年4月6日の緊急経済対策において、内閣総理大臣を本部長、関係大臣を本部員とする都市再生本部を内閣に設置し、「21世紀型都市再生プロジェクト」を具体的に選定し、集中的、重点的な推進を図ることとした。
      これに基づき5月8日、都市再生本部が発足したが、本部は、関係省庁のみならず、東京都など関係自治体や経済界等と密接な連携の下に作業を行っている。民間の活力を都市に振り向けるよう、経済構造改革の一環として推進することを基本としている。
      本部は、東京圏、大阪圏等の大都市圏における具体的なプロジェクトを取りあげ、その推進を図る。地方都市についても、中心市街地の問題など横断的かつ構造的な共通課題への制度的対応等を検討する。

    3. 「都市再生プロジェクト」の選定
    4. 「都市再生プロジェクト」は、(a)「21世紀の新しい都市創造」を図るため、国際競争力のある世界都市の形成や安心して暮らせる美しい都市の形成など、21世紀にふさわしいリーディングプロジェクト、あるいは(b)「20世紀の負の遺産の解消」を図る観点から、地震が発生した場合に危険な市街地の存在や慢性的な交通渋滞等の解消を図るなど、緊急課題対応プロジェクトに該当する事業である。
      上記に該当する事業のうち、(a)都市構造に係る基本的な課題に関わるものや、従来とは異なる新しい手法を必要とするものなど、内閣の統一的方針に基づき、関係省庁が総力を挙げた取り組みが必要なもの、(b)民間投資への大きな誘発効果を有するものや、虫食い土地の整形化による有効利用など土地の流動化に資するものなど、経済構造改革につながるものについて、「都市再生プロジェクト」として選定する。
      これまで決定された「都市再生プロジェクト」は下記の通りである。(1)〜(3)が第一次決定(6月14日)、(4)〜(8)が第二次決定(8月28日)によるものである。

      (1) 東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備:
      海からのアプローチが可能な東京湾臨海部において、災害対策活動の核となる現地対策本部機能を確保する。候補地として、有明、京浜臨海、京葉臨海等が挙げられている。関係省庁および7都県市間でさらに検討を進め、年度内に具体的な立地場所等を決定したい。

      (2) 大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築:
      東京圏は廃棄物処理の他地域への依存度が高いことから、高度処理を行う廃棄物・リサイクル関連施設を複合的に整備する。広域的な取組みを推進するため、関係省庁と7都県市からなるゴミゼロ協議会を7月下旬に立ち上げ、11月までに中間的なとりまとめを行い、年度内に結論を出す予定である。候補地としては、中央防波堤や城南島、京浜臨海部等がある。

      (3) 中央官庁施設のPFIによる整備:
      中央政府が所管するPFI事業がまだ行われていないことから、文部科学省、会計検査院の建替を街区全体の整備と併せてPFIにより実施する。現在、地権者間で街づくり協議会を設置して検討を行っている。

      (4) 大都市圏における国際交流・物流機能の強化:
      空港の機能強化と空港アクセスの利便性向上を図る。成田空港の平行滑走路の整備に加え、羽田空港について国際化を視野に入れて再拡張する。また、北総・公団線の延伸や都営浅草線の東京駅接着、北千葉道路等の早期実現を図る。
      また、わが国港湾は、大型コンテナ化や情報化への対応の遅れから、アジアの主要港に比べて取扱量のシェアが大幅に減少している。「いつでも、より速く、より安く」を目標に、国際競争力のあるサービス、コスト水準を実現するため、ワンストップサービス化、ノンストップ化、フルオープン化に取り組む。

      (5) 大都市圏における環状道路体系の整備:
      東京圏において、圏央道、外環、中央環状線のいわゆる首都圏三環状道路を整備し、2007年度までに暫定的な環状機能を確保する。大阪圏等においても、新たな環状道路を形成する。

      (6) 大阪圏におけるライフサイエンスの国際拠点形成:
      アジアには医療関係のセンター・オブ・エクセレンスが存在していないことから、大阪圏においてライフサイエンスの基礎から臨床研究、産業化に至る総合的な国際拠点を形成する。

      (7) 都市部における保育所待機児童の解消

      (8) PFI手法の一層の展開

    5. 民間都市開発投資促進のための緊急措置
    6. 民間の投資規模が大きく、都市再生上の意義が高い事業について、「民間都市開発プロジェクト」を選定し、関係省庁と連携し、地方自治体と一体となる強力な推進体制を整備する。具体的には、都市計画・建築規制等の柔軟かつ早期の対応や関連公共施設の戦略的・重点的整備等により、民間の時間リスクの軽減を図りつつ、創意工夫を活かし、早期に投資環境を整備する。また、共通に必要となる制度の改善を図る。

  2. 経団連側意見要旨
    1. 推進すべき事業のプライオリティ付けが必要であり、工程表を早期に作るべき。
    2. 東京圏の再生を最優先に取り組むべき。
    3. 予算措置と税制優遇措置、制度改正の3つの政策をうまく組み合わせて都市再生に取り組むべき。


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