経団連くりっぷ No.156 (2001年10月11日)

貿易投資委員会総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/9月26日

WTO新ラウンド交渉10月が正念場

−外務省経済局 伊原国際機関第一課長よりきく


WTOカタール閣僚会合(11月9日〜13日)に向けた状況について外務省経済局の伊原純一 国際機関第一課長より説明をきくとともに懇談した。

○ 伊原課長説明要旨

  1. 閣僚宣言ドラフト
  2. 9月初旬にメキシコで開催された非公式閣僚会合では、具体的合意はなかったものの、たいへん良い雰囲気で行われた。APEC閣僚会議の前に、シンガポールで非公式閣僚会議がもう一度行われることになった。
    ジュネーヴでの作業は、10月に山場を迎える。ハービンソン一般理事会議長は、9月の最後の週にドーハ閣僚宣言のドラフト案と実施問題に関するペーパーを提示する予定だ。

  3. 各国の立場
  4. ケアンズと米国は、新ラウンドにおいて市場アクセスの改善のみを交渉することを望んでいる。ウルグアイラウンドの農業交渉は、ルール策定も市場アクセスも不十分だったとの立場である。幅広い交渉を望んでいるのなら、農業交渉は不可欠と主張している。
    途上国の強硬派は、新分野を取り上げたいのなら、実施問題を解決すべきとの条件を出している。実施問題に対しては、米国はアンチダンピング、繊維、補助金の問題を抱えているため、途上国が満足するような明確な姿勢を示すことはできない。

  5. 主な交渉アジェンダ
  6. (1) 農業
    農業協定第20条の取扱いについて、各国の立場が対立している。ケアンズは、農業交渉は新ラウンドの一部ではなくURの継続交渉と受け止めている。新ラウンドの一部とするのなら、より「野心的な」マンデートにすべきと主張しており、日本は厳しい立場にたたされている。

    (2) アンチダンピング、補助金
    米国議会は、アンチダンピング、補助金等、貿易救済措置に関して、大統領への交渉権限は与えないとの立場である。ゼーリックUSTR代表は、米国が本件で孤立していることを理解しているが、議会に対する切り札がない。どのような形で閣僚宣言に盛り込むかがこれからの課題である。

    (3) 投資、競争
    日本とEUが新ラウンドに盛り込むべきと主張しているが、アセアン、香港、エジプト、南アフリカは懐疑的である。閣僚宣言にルール・メーキングを明記することはかなり困難に思われる。

    (4) 環境
    EUが環境を新ラウンドに盛り込むことを主張している。ヨーロッパは、環境やアンチグローバリズム等、市民社会に非常に敏感である。また、フランスは翌年、大統領選挙を控えており、政治的にも環境を重視している。環境の取扱いは、新ラウンドの行方を大きく左右することになろう。

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