経団連くりっぷ No.157 (2001年10月25日)

第34回東北地方経済懇談会/9月27日

構造改革の推進と東北広域連携圏の形成


経団連と東北経済連合会(東経連)は仙台市において標記懇談会を共催した。地元経済人約230名参加のもと、経団連側は今井会長、荒木・片田・香西・上島・西室の各副会長が出席し、東経連首脳と最近の経済動向、国際経済交流、環境問題等について意見交換を行った。

  1. 東経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      坪井孚夫 副会長(福島県商工会議所連合会会長)
    2. 明間会長が都合により欠席のため、私から挨拶させていただく。
      IT関連産業が集中している東北地方では、ITの生産水準の低下が雇用や消費に深刻な影響を及ぼしている。わが国経済、国民の将来への不安を解消するためには、小泉内閣が掲げる「聖域なき構造改革」を断行し、新時代にふさわしい経済社会システムを構築することが重要である。
      こうした中、東経連では東北新世紀ビジョン「ほくと七星構想」に基づき、

      1. 東北広域連携会議の設立、
      2. 東北ベンチャーランド運動の推進、
      3. 国際観光戦略事業の推進、
      4. 北東アジアミッションの派遣、
      などの諸課題に重点的に取り組んでいる。
      東北の自立と連携を促進する上で、高速交通体系や情報通信等の社会資本整備が不可欠であるが、政府が進める構造改革は、地方の現状を無視した一方的な議論が台頭しており危惧を感じる。社会資本整備は、21世紀の国土のあるべき姿を見据え、長期的な視点を持って整備を推進すべきである。

    3. 東北の情報化推進に向けたIT戦略
      坪井孚夫 副会長
    4. ITにより東北経済が新たな発展を行うには、地域における情報通信基盤を整備していくことが重要である。併せて、ITを活用し、革新できる人材を集積するとともに、情報サービス業を育成することが必要である。
      東北の情報化推進に向けたIT戦略としては、第1に、各県が整備を進めている情報ハイウェイを広域的なネットワークとすることが求められる。第2に、地域の雇用確保や中心市街地の活性化という観点から、東北の情報サービス業の集積を拡大する必要がある。第3に、ITのさらなる普及を図るため、低廉な価格と簡単な操作で利用できる機器・サービスを開発するなど、ITのユニバーサル化の促進と、コミュニティビジネスの起業促進に取組むことが必要である。

    5. 東北における国際観光の推進に向けた取組み
      鈴木彦治 副会長(バイタルネット相談役)
    6. 観光産業は21世紀をリードする基幹産業の一つになると期待されている。東北では昨年11月、7県の官民が一体となり「東北地域国際観光推進協議会」を設立した。本協議会では、海外で知名度の低い東北の弱点を克服するため、韓国語や中国語で東北地域を紹介するガイドブックを発行するなど、情報発信の充実に積極的に取り組んでいる。また、本協議会と東経連は、国際交流事業の推進に向け、本年4月に韓国にミッションを派遣し、魅力ある東北のPRに努めている。
      来年開催のワールドカップにおいて東北地域では新潟と仙台が舞台となり、翌2003年には青森で冬季アジア大会が開催される。こうした国際イベントを成功させるためには、地域全体の総合力を発揮することが不可欠である。

    7. 東北における循環型社会の構築に向けて
      八島俊章 副会長(宮城県経営者協会会長)
    8. 東北はリサイクル施設の未整備、輸送コスト高などから、廃プラスチックの有効利用が全国に比べて低い状況にある。こうした現状を踏まえ、廃プラスチックのリサイクル促進のため、

      1. リサイクル事業者の情報を、排出者に提供するなどの情報交換システムの構築、
      2. 産業廃棄物処理事業者の施設の有効活用、
      3. 環境教育、排出抑制努力などの排出者自身の取組み、
      4. 国の直接的・間接的な支援や法整備によるリサイクル事業者の参入の円滑化、
      が必要である。
      二酸化炭素削減を通じた地球温暖化防止については、企業の自主行動計画を柱として取り組むべきである。また、環境税等の経済的手法の導入については、わが国産業の国際競争力維持の観点から、慎重に検討すべきである。

    9. 東北における広域連携の拡大・深化を目指して
      村松 巌 副会長(宮城県商工会議所連合会会長)
    10. 東北が活力ある自立した地域として発展するためには、東北の優れたポテンシャルを積極的に活かしながら、東北7県が連携して地域戦略を策定することが重要である。この広域連携を具体的に進めるに当たっては、東北7県、東経連、各県商工会議所連合会など、官民から成る「東北広域連携会議」の設立を今後具体化させ、新産業創出、国際観光、国際物流、国際交流の各分野で取り組んでいきたい。

    11. 地域間交流で拓く東北と北東アジアの未来
      辻 兵吉 副会長(秋田県商工会議所連合会会長)
    12. 地方分権の流れが強まる中、地域が自立・発展するためには、地域が国際交流の主体となり、世界に向け情報をダイレクトに発信、行動することが重要となっている。
      東北地方の対岸に位置する北東アジア地域については、従来から定期コンテナ航路や定期航空路など人的・物的交流の基盤整備が進んでおり、「北東アジア経済圏」形成に向けた動きが加速化することが期待される。今後、韓国一国に匹敵する経済力を持つ東北地域に蓄積されている産業、技術、特色ある経営資源などの情報を、北東アジアのみならず世界に向けて発信していくことが重要である。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 片田副会長より会社法制の整備、西室副会長より今後の社会保障制度改革、荒木副会長よりエネルギー・環境問題、香西副会長より地域の自立的発展に向けた取組み、また、上島副会長より近隣諸国との経済交流拡充について説明があった。
    最後に今井会長より、東北におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として構造改革に向け積極的に活動していくとの総括があった。


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