OECD多国籍ガイドライン ナショナル・コンタクト・ポイント年次会合をめぐる懇談会/10月3日
OECDでは昨年、企業の海外活動の指針である「OECD多国籍企業ガイドライン」を改定した。同ガイドラインには法的拘束力はないものの、各方面で拘束力の強化、あるいは個別問題事例の提起に向けた動きが見られている。そこで、経団連OECD諮問委員会(委員長:生田正治氏)では、この度、外務省から川村泰久 国際機関第二課長を招き、OECDにおける同ガイドラインをめぐる議論の状況などについて話をきいた。
OECD多国籍企業ガイドラインは1976年に制定され、1979年、1984年、1991年、2000年に改定された。同ガイドラインに法的拘束力はなく、実施は企業の自主性に委ねられるが、OECD各国政府は連絡窓口(NCP)を設置してガイドラインの普及や照会の処理等に当たっている。ガイドラインに関して生じた問題については、加盟国内ではその国の連絡窓口が、非加盟国にて問題が生じた場合は企業母国の連絡窓口が当事者と協議を行い、OECD国際投資多国籍企業委員会(CIME)に報告する。CIMEは各国の連絡窓口を支援しガイドラインの解釈は行うが、個別ケースについて決定を行うことはない。
2000年の改定では、労働、環境、贈賄、情報開示、消費者利益などの分野で、児童労働や強制労働の禁止、環境情報の公開、外国公務員等に対する贈賄の禁止、企業情報の公開、苦情処理に関する情報開示などの項目が新たに盛り込まれた。
OECD各国のNCPはガイドラインの実施状況をCIMEに報告するとともに、毎年会合を開催することとなっており、6月18日に第1回会合が開催されたが、そこでは、各国NCPの設置状況報告に加え、具体的違反事例も討議され、TUAC(OECD労働組合諮問委員会)からはミャンマーでの強制労働問題が提起された。この問題は9月のCIME会合でも再び取り上げられたが、今後個別企業の国際活動におけるガイドライン違反が関係者から取り上げられる事例が増える可能性も考えられ、日本企業もOECDガイドラインを遵守するとともに、その旨を積極的に広報することが対外関係上も重要になると思われる。
また、これらの会合では、ガイドラインの実質的な拘束力を強化すべきとの意見も一部西欧諸国から表明されており、今後の議論の行方に注意を払う必要がある。