経団連くりっぷ No.158 (2001年11月8日)

なびげーたー

二国間経済会議はこのままでよいのか

常務理事 藤原勝博


二国間委員会は参加者にどう役立っているのか、運営方法はこのままでよいのか、日本の国際経済戦略はどこがどう決めるのか。会議の準備に当たる立場から見た課題二つ。

 経団連が事務局を務める二国間委員会は17ヵ国に及ぶ。今年度に入ってから、ベネズエラ、カナダ、ミャンマー、イラン、タイ、メキシコと会議を行った。年度末にかけて、台湾、香港、ベトナム、トルコなどが予定されている。この他にも海外へのミッション派遣、海外からの政府、経済界の要人来訪も多い。それらの準備に当たる立場から日頃悩んでいることを2点に絞りお伝えし、会員の皆様のご意見、ご批判を仰ぎたい。

 第1は、会議が参加者に一体どこまで役立っているか、である。会議では双方の政治、経済の概況を説明し合い、直接投資、貿易、技術移転、人材開発などのテーマや、WTOなどの共通関心事を話し合う。日本側は相手国のビジネス環境や障害について言及することが多い。相手側は日本企業の投資、技術を求めることが多い。しかし、経団連の会議では、個々のビジネス活動は個々の会社の専決事項だという大原則があり、事業のパートナー捜しや、紹介、斡旋などは会議としては取り上げない。もっとも副産物として生まれることはあろうが。しかし、外国企業の中には、「商談会」の機能を会議に期待する傾向がある。また日本の中小企業とのビジネス交流を求められることも多い。大企業中心の経団連側と中小企業の多い相手側との差異をいかに埋めて、双方の満足度をさらに高めるかという問題である。

 第2は、さまざまな会議に際して、日本側に個々の企業単位を越えた国としての一貫した戦略のようなものがあるか、である。例えば、低い労賃を求めて、皆が中国に殺到する。その結果、日本産業の空洞化と失業増大の懸念が出ているが、これにどう対応するか、またASEANとの関係をどうするかという問題。また例えば、ロシア向け投資は個別企業の立場からすれば、「しばらく静観」が合理的かもしれない。しかし、その結果、日本のロシア向け投資がコンマ以下になり、ロシアの政府も民間経済界も、日本に関心を失ってしまう事態をどう考えたらよいのか。国としての戦略となれば国の仕事であり、官に期待すると言っても、政府に総合的な戦略といわれるものがあるのだろうか。利害の異なる個別企業の集まりである経団連にとっても難題である。

 世界の超大国、アメリカはまさに戦略の国であり、欧州は統合という大戦略の下で動いている。開発途上国は政府主導経済の場合が多い。日本は今、大きな政府から小さな政府への転換をはかりつつある。「民間でできることは民間に」の原則はよいが、国の国際経済戦略は一体どこがどう決めるのだろうか。二国間の会議がすぐ答えを出せるものではないが、これを考えるよい機会ではあろう。


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