経団連くりっぷ No.159 (2001年11月22日)

なびげーたー

COP7と真に有効な地球温暖化対策

環境・技術本部長 高橋秀夫


温暖化対策は国民に痛みを伴う。経済活動への影響も大きい。世界各国が参加できる持続可能な長期の実効ある対策の策定が求められている。

11月10日(土)、現地時間の早朝に最後の全体会合が開催され、京都議定書の細目にかかわるテキストについての合意を受けて、モロッコ・マラケシュで開催されたCOP7は終了した。この合意を受け、国内の一部には温暖化ガスの6%削減目標が容易に達成できるかのような報道等も見られる。しかし、今後2008年から始まる第一約束期間に向けての作業が大変になることは目に見えている。

1990年と比べて国全体のCO2排出量は6.8%増加している。産業界は経団連の環境自主行動計画の効果もあって、1990年比ほぼ横ばいであるが、運輸、民生の各部門は二桁の勢いで増加している。両部門は国民のライフスタイルにかかわる部門だけに、国民一人ひとりが省エネを心がけないといけない。それだけの自覚が国民にあるのだろうか。政府は温暖化対策の本当の痛みが国民生活にくることを国民に訴えてきたのだろうか。はなはだ心もとない。

CO2の発生はエネルギーの消費から生ずるものであり、生産活動そのものと言ってよい。したがって、経済の活性化・経済活動の拡大と温暖化が両立するには画期的な技術のブレイクスルーが必要である。それでは燃料電池、水素エネルギー、CO2固定化技術等に国をあげて支援をし、技術開発のめどはついているのだろうか。答えはノーである。要はやってみなければわからない状況にある。

こうした対策の遅れを産業界にしわ寄せする考えもあるだろう。環境自主行動計画の義務付けや環境税の導入など強制的措置の導入である。しかし、京都議定書には米国は参加しない。中国や韓国の将来の参加も約束されていない。日本の競争相手が規制をまったく受けないまま、日本だけが追加的対策を講ずれば国際競争力に影響し、雇用の削減につながることは目に見えている。規制の多い日本から企業が脱出し、アジアで生産を拡大すれば、温暖化対策にならない。しかも、今日本はデフレの進行を懸念する状況にある。こうした経済状況を考えれば、増税や規制が小泉総理の進める構造改革に逆行することは明らかである。

だからCDM、JI、排出量取引を使うという人もいるだろう。しかし、現在提案されているこれらの手続きが本当に大変なことを知っている人は何人いるだろう。CDMは気の遠くなる手続きを要求し、排出量取引は政府が排出量上限を決めるという統制的手段なくしては活用できない。

今本当に必要なことは、感情に流されることなく、世界中の国々が参加でき、経済活動にも国民のライフスタイルにも無理を強いることのない、持続可能な温暖化対策である。温暖化対策は今後何年も続く。手を緩めることはできない。だからこそ、慎重で実効の本当に上がる対策をつくり上げることが求められている。


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