貿易投資委員会(委員長 槙原 稔氏)/10月25日
11月9日〜13日にカタールのドーハでWTO閣僚会議が開催され、新ラウンド交渉が開始する予定となっている。そこで、貿易投資委員会では、外務省の北島信一 経済局長を招いて、閣僚会議に向けた最近の状況等についてきくとともに懇談した。
9月末に、ハービンソンWTO一般理事会議長(香港行政府ジュネーブ代表)から閣僚宣言案が配られた。10月中旬にシンガポールで開催された非公式閣僚会議には、わが国や米国、EUを含む21カ国・地域が出席し、この案をベースに議論が行われた。今後、今週末には閣僚宣言案の改訂版が配られる予定であり、これを基にドーハで各国閣僚が議論をし、新ラウンド交渉の開始を決める予定である。
閣僚宣言案では、すでに交渉が始まっているサービス貿易・農業貿易等の合意済み課題(ビルト・イン・アジェンダ)、鉱工業品の関税引き下げ、アンチダンピング協定・補助金協定については交渉を開始することが明記されている。
投資・競争については、交渉開始と作業部会の継続の両論が併記されている。
EUが交渉を強く求めている貿易と環境については、交渉議題とはされなかった。また、貿易と労働については前文で言及されているのみとなっている。
農業については、農産物輸出国の集まりであるケアンズ・グループとわが国で意見が異なっており、今後の調整が見込まれる。
アンチダンピングについては、わが国には望ましい内容であるが、米国が、議会との関係等から強く反対しており、現行案のまま交渉議題となるかは分らない。
貿易と環境については、交渉を開始するとは書かれておらず、EUはこれに強く反発している。
途上国が強く求めているウルグアイラウンド合意の実施をめぐっては、閣僚宣言案と並行してペーパーが配られた。一部の途上国は、これを不十分だとして強く反発しており、日米欧加の四極を中心とした先進国で対応を議論している。
途上国は、東京ラウンド、ウルグアイラウンドの頃と比べて格段にプレゼンスを高めている。
1999年のシアトル閣僚会議に比べると、ドーハ閣僚会議に向けた準備は進んでいる。
特に、9月11日の米国テロ事件以降、ほとんどの国が新ラウンド交渉の重要性を認識し始めており、おそらく新ラウンドは立ち上がるであろう。
他方、交渉議題をめぐっては、最後まで加盟国・地域間での合従連衡が続くため、どうなるか予想できない。