経団連くりっぷ No.159 (2001年11月22日)

日タイ貿易経済委員会(委員長 安居祥策氏)/10月22〜23日

今後のアジアにおける分業のあり方やタイの競争力強化の方策等について討議

−第17回日タイ合同貿易経済委員会を開催


日タイ貿易経済委員会では、タイの経済3団体(タイ貿易院(BOT)、タイ工業連盟(FTI)、タイ銀行協会(TBA))との間で、10月22日と23日の両日、第17回合同委員会を東京にて開催した。日本側からは安居委員長はじめ約60名、タイ側からはアート・タウラナンBOT会長、タウィー・ブツントーンFTI会長はじめ22名が参加し、両国の政治経済情勢やアジアにおける分業体制の再構築、これからの日タイ協力のあり方等について活発な意見交換が行われた。


安居委員長

アートBOT会長
  1. 開会挨拶の中で、安居委員長は、最近の米国における同時多発テロの犠牲者に対し、深い哀悼の意を表明するとともに、この事件が世界経済にマイナスの影響を及ぼすことが懸念されると述べた。また、国際環境が変化しつつある中で、競争を勝ち抜くためには構造改革が重要であること、経済のグローバル化の中で、日本、タイ、中国がどのように共存共栄の道を探るべきかを研究する必要があることを強調した。

  2. 続いて挨拶したアートBOT会長は、最近の世界的な景気低迷の中で、日タイ間の協力拡大の必要性を強調した。また、タクシン政権がタイの政治的安定の維持に断固として取り組んでいることを紹介し、日本企業がタイとの貿易およびタイへの投資に一層積極的に取り組むことを求めた。

  3. 「日タイ双方の政治経済情勢と改革の行方」をテーマとした第1セッションでは、日本側から、小泉総理が抜本的な規制改革や民営化などの「聖域なき構造改革」に取り組んでいることを紹介した。そして、構造改革により日本経済が活力を取り戻すことで、日本企業によるアセアン地域、特にタイにおける投資の拡大も期待できるとの認識を示した。

  4. 他方、タイの政治経済情勢については、タイ側から、タクシン首相のリーダーシップのもとで国営資産管理会社(TAMC)による不良債権処理の促進、村落基金の創設や、「一村一品運動」、中小企業銀行の設置など、タイ経済の安定的発展に向けた諸施策が実施に移されていることの紹介があった。

  5. 「アジア分業体制の再構築とタイの役割・対中投資の動向やAFTAの実現を踏まえて・」をテーマとした第2セッションでは、中国への投資の動向やアセアン自由貿易地域(AFTA)の進展状況を踏まえて、タイが果たすべき役割や日本企業の取組みなどについて、討議が行われた。日本側からは、タイが引き続きアセアンにおける主要な投資先であることを期待しているとして、タイ側の理解と努力を求める発言があった。これに対してタイ側からは、アセアン諸国は中国を戦略的パートナーとすべきであり、日タイ両国は、新しい国際分業体制の中でともに繁栄できるよう一層緊密に協力すべきとの提案があった。また双方の出席者は、中国の製造業の競争力が今後も向上していくと、日本、タイを含むアセアン諸国、さらにはそれら諸国で活動する日系企業が大きな影響を受けるとの認識で一致した。そのため、アセアン諸国はAFTAを着実に実現するとともに、アセアン域内の結束強化に取り組むことが重要であるとの点でも意見が一致した。

  6. 午後の第3セッションでは、これまでの合同委員会における議論の結果として設立された、FDC(食品加工部会)、EDC(電気・電子関連産業開発部会)、GMS(メコン流域開発に関する作業部会)の3つの部会と、SIIT(タマサート大学シリントン・インターナショナル・インスティチュート・オブ・テクノロジー)をはじめとする人材育成協力関連の活動について、それぞれタイ側から報告があった。一方、日本側からは、タイにおける人材育成協力として、「タイ東北部中高生奨学金(経団連スカラシップ)事業」が成功裏に終了し、その残金が「JCC21世紀教育基金」に引き継がれたことや、SIIT学生の日本企業における研修への協力等について説明した。

  7. 第4セッションは、「これからの日タイ協力関係」と題して、タイの競争力強化の方策やIT分野での協力など、さまざまな問題について討議した。ここでは、日本が引き続きタイからの輸入の拡大に努めるとともに、タイの産業および製品の競争力強化のため、必要な協力を行うことで合意した。また、タイ側から、マネジメント、科学技術、人材の3つの分野における協力や、タイ商業会議所が設立するビジネス情報センターに対するアドバイザー派遣などの協力等について要請があり、こうしたタイ側からの提案をフォローアップするため、盤谷日本人商工会議所にワークショップを設置することになった。

  8. 他方、日本側からは、タイにおける技術訓練・職業訓練の重要性や、日本に滞在している外国人留学生のための良好な環境づくりの必要性を指摘した。また、情報通信(IT)分野については、この地域における通信ネットワークのインフラ整備を中心として、引き続き効果的な協力のあり方について検討することとなった。

  9. 観光・物流分野に関しては、日本側から、両国間のビジネス客、観光客の往来がともに増加傾向にあり、航空貨物の輸送実績もここ数年、着実に伸びているとの紹介があり、米国における同時多発テロによる短期的な落ち込みはあるものの、両国間の旅客・貨物輸送はまだまだ拡大の余地があるとの見方で双方が一致した。

  10. 今回の合同委員会の成果は、本年11月に予定されているタクシン首相の訪日に際して、日本側から紹介されることとなった。その際、民間企業にとって好ましいビジネス環境の整備にタイ政府が一層努力することを日本側から求めることとなった。なお、次回の合同委員会は、双方の都合の良い時期にタイで開催することとなった。


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