経団連くりっぷ No.159 (2001年11月22日)

農政問題委員会企画部会(部会長 松崎昭雄氏)/10月26日

農業構造改革推進のための経営政策

−農林水産省大臣官房企画評価課 武本課長よりきく


今日、農業生産基盤を強化し、生産性の向上や高付加価値型の農業経営を確立することが求められている。当部会では、農政改革のあるべき方向性について検討を深めるため、農林水産省大臣官房企画評価課の武本俊彦課長を招き、政府の「農業経営政策に関する研究会」で8月に取りまとめられた「農業構造改革推進のための経営政策」について説明をきくとともに、意見交換を行った。

  1. 武本課長説明要旨
    1. わが国農業を取り巻く環境
    2. わが国農業においては、米価など農産物価格が全般的に下落基調にあること、農産物輸入の増大、さらに、米をはじめ農業構造改革の遅れなどにより、意欲と能力のある経営体(=育成すべき農業経営)の経営が困難となっている。従って、将来にわたって農業の持続的な発展を図るためには、農業経営に関連する諸施策を見直し、再編していくことが重要である。

    3. 農業経営関連諸施策の見直し・再編
    4. 構造改革を推進する上から、「育成すべき農業経営」に諸施策を可能な限り集中化・重点化することが不可欠である。ここで言う「育成すべき農業経営」とは、食料自給率の向上(2010年を目途に、現状の40%から45%に向上させることが目標)を基本とした食料の安定供給を中心的に担うことが期待され、経営の規模拡大等の経営改善をしていこうとする農業経営を指す。また、

      1. 創意工夫を生かした農業経営の展開を可能とする構造改革の推進、
      2. 安全・安心で良質な食料の供給システム構築による消費者の信頼確保、
      3. 構造転換に取り組む経営の価格変動リスクを軽減するセーフティネットの整備、
      など優先度の高い施策に重点化していく必要がある。
      1. については、農地の利用集積の促進等により、育成すべき農業経営に生産要素を集中化していく。また、今後のわが国農業の発展に資するとの観点から、新たな農業生産法人制度の実施状況を検討する。さらに、水田農業の構造改革のための米政策の総合的かつ抜本的な見直しを行う。
      2. に関しては、昨今の狂牛病対策の経験からも、食品等の生産、加工、流通過程を遡ることができるトレーサビリティー・システムを構築する。
      3. については、「育成すべき農業経営」が構造転換に積極的に取り組めるよう、価格の変動による収入または所得の減少による経営リスクを軽減するセーフティネットの構築を検討する。具体的には、保険方式や積立方式等、制度の具体的な設計に必要な調査を実施していく。

  2. 意見交換(要旨)
  3. 経団連側:
    農業構造改革の推進によって、産業界にはどのようなメリットがあるか。

    武本課長:
    経営の規模拡大等によって、より効率的な農業生産が可能となり、食品産業のコストダウンにつながることが期待される。

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