循環型社会を考えるシンポジウム/10月17日
静脈物流による港湾空間の高度利用をテーマとして、NPO法人リサイクルソリューションと(財)港湾空間高度化環境研究センターが主催し、経団連と国土交通省、日本経済新聞社等が後援する標記シンポジウムが開催され、経団連からは、廃棄物・リサイクル部会長の庄子幹雄氏が出席した。企業や地方公共団体の環境・港湾関係者約530名が参加する中、循環型社会を支える重要な基盤となる静脈物流システム構築の必要性、さらに低コストの大量輸送が可能であり、環境にも優しく、港湾の有する用地や既存の物流・産業ストックを活用できるといった利点を持つ「海上輸送ネットワーク」構築の必要性等が提言された。以下はシンポジウムの概要である。
リサイクル産業は収集面や製品、市場での不安定性があるため、産業として興すためには、種々の施策が必要である。たとえば、市民による分別排出を促すための教育・啓蒙や技術開発支援、法制度整備、インフラ整備、経済的インセンティブが必要と考えているが、地方公共団体としては、どのような施策をどこまで打つかが最大の課題である(図1参照)。
図1 リサイクル事業成立のためのシステムづくり
北九州市臨海部の優位性は、港湾があり船舶が利用できることや、広大なストックヤードの確保ができること、管理型の最終処分場を持っており重要度が高い最終の残さ処分ができることである。北九州市で環境産業を興す取組みを始めた当初は、物流のことはあまり意識になかったが、一般廃棄物処理にかかる費用のうち多くを運搬費が占めるため、環境産業を成立させるためには物流コストを下げることが非常に重要と考えるようになった。物流コストを下げるためには、環境産業の隣に製造業等の物流が発生する企業を併設し、北九州からの帰便に半分でも荷物を乗せることも有効な手段である(図2参照)。
図2 拠点化のための基盤整備概念図
今後リサイクル産業が発展していく過程では、国内輸送が大部分であり、トラック輸送が主流になると考えている。将来的には、物流効率化の観点から産業立地を進めていくとともに環境負荷の低減を考慮したモーダルシフトを促進し、また国際的な物流を視野に入れた港湾整備や響灘の未利用地を有効活用した幅広い静脈産業の立地を促進していくことが考えられる。その際、輸送コストを計算すると海上輸送には大きな可能性が出てくるだろう。北九州市には着岸可能な港湾施設も多数ある。国としても、大量輸送を可能とするよう、港に物流基地を配置することによって輸送コストを下げることを考える必要がある。市としては、海上輸送だけでなく鉄道輸送、トラック輸送を含めた総合的なネットワークを構築し、輸送コストを下げることでリサイクル産業を育てる等の地域発展計画を立てることを考えたい。