経団連くりっぷ No.160 (2001年12月13日)

アメリカ委員会企画部会(部会長 本田敬吉氏)/11月16日

2002年半ばに米国経済は回復に向かう


アメリカ委員会企画部会では、東京三菱銀行調査室の山上秀文室長、山口綾子調査役より同時多発テロ事件後の米国経済の動向について話をきくとともに懇談した。

  1. 山上調査室長説明要旨
    −米国経済の見通し
  2. 米国経済は、9月11日に発生した同時多発テロ事件を契機にリセッション入りした公算が高い。個人消費は、9月にテロ事件の直接的影響から前月比マイナス1.3%と大幅に落ち込んだ結果、第3四半期は前期比年率1.2%まで伸びを低下させた。今後も、雇用者数減少に伴う所得の伸びの鈍化や消費者マインドの悪化から減速基調を辿ると考えられる。実際、雇用者の大幅減少は継続しており、10月には非農業部門雇用者が40万人強減少した。さらに、底打ち感があった消費者マインドも、レイオフの急増、報復テロへの懸念等によって急速に悪化している。設備投資も最終需要の伸び鈍化と収益の悪化から減速傾向を持続しており、年初には景気を底支えするとみられていたIT投資も更新投資の先送りから低迷している。
    しかしながら、低迷を長期化させるストック調整の可能性は低いため、設備投資は2002年後半に回復するとみられる。また、テロ事件後に矢継ぎ早に講じられた財政金融政策は、限定的ながらも景気を下支えしている。さらに、生産者物価、消費者物価ともに弱含みで推移し、インフレ懸念が後退しているため、追加利下げの余地も依然残っている。
    以上により、米国経済は、財政・金融政策の効果や在庫調整の一巡とそれに伴う民間需要の持ち直しから、2002年半ばには回復に向かい、年末にかけては年率3%前後の成長軌道に復すとみられる。但し、米軍の軍事行動の長期化と報復テロの続発、さらにはその結果としての企業収益の下方修正と株価再調整等の下振れリスクは残る。

  3. 山口調査役説明要旨
    −テロ事件後の米国消費動向
  4. テロ事件の発生により、これまでGDP成長を支えていた個人消費も落ち込み、Retail Chain Store Sales Index(チェーンストア販売指数)も急落した。さらに二次的影響として、第1に、消費者マインドの悪化、第2に、航空、旅行、ホテル業界を中心とした雇用調整の加速が生じている。失業率は5.4%に達しており、上げ止まっていた新規失業保険申請件数も急増している。第3に、足許では下げ止まりをみせているものの、株価下落の影響が懸念される。今後の株価動向次第では、これまで顕在化してこなかった逆資産効果が顕在化する可能性もある。
    他方、ゼロ金利ローンによる販促活動が効を奏し、10月の乗用車販売台数は急増した。これは、一時的に第4四半期の個人消費を押し上げるとみられるが、需要の先食いに終わる可能性もあり、ゼロ金利キャンペーン終了後の反動が懸念される。


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