経団連くりっぷ No.161 (2001年12月27日)

第29回東亜経済人会議/12月6日〜7日(於:台湾・高雄)

中国の経済発展が日台双方に及ぼす影響について討議


東亜経済人会議日本委員会(香西昭夫委員長)では、毎年、台湾の経済人との間で東亜経済人会議を開催している。本年は12月6日、7日の両日、第29回会議を台湾の高雄にて開催した。
日本側からは香西委員長はじめ73名、台湾側からは辜濂松会長ほか97名が参加し、昨年の沖縄での会議に引き続き、今回も今井会長が参加して基調講演を行ったほか、双方の経済情勢や中国大陸の経済発展が双方の経済に及ぼす影響、今後の日台企業間協力等について、活発な意見交換を行った。以下はその概要である。

第29回東亜経済人会議
  1. 今井会長は、「日本経済の現状と今後のアジア経済の展望」と題する基調講演の中で、台湾と中国のWTO加盟が正式承認されたことを受けて、日台間、日中間、さらには中台間の経済交流が今後一層拡大することが期待されると述べた。また、中国のWTO加盟は大きなチャンスであると同時にチャレンジでもあり、中国市場をめぐって各国企業間の競争が熾烈になるとの見解を示した。さらに、中国経済の成長がアジアの国際分業体制に及ぼす影響について、経団連として考察を行うとともに、中国製造業の実力について検証していると紹介した。

  2. 続いて基調講演を行った台湾経済研究院の呉榮義院長は、台湾経済は今年、米国経済の減速などによる輸出の落ち込みや民間消費の低迷などを受けて、1951年の統計開始以来、初のマイナス成長になると予測されるが、米国経済が回復すれば台湾経済も回復するとの見方を示した。また、12月1日に行われた立法委員選挙(国会議員選挙に相当)で与党民進党が第1党になったことから、政権が安定し、これが台湾経済にも良い影響を与えると発言した。さらに呉院長は、台湾経済は知識経済に移行しつつあり、1990年代の10年間の特許認定件数は世界第7位、活用度では世界第4位であると紹介し、ハイテク分野における台湾の競争力は強いと説明した。

  3. 基調講演の後に行われた全体会議 I 「今後のアジア経済、世界経済〜中国大陸の経済発展は新たな経済秩序を生み出すか」では、台湾と中国のWTO加盟正式承認により、日台間、日中間、さらには中台間の経済交流が一層拡大するよう、日台双方の企業が連携・提携を強化すべきだという点で認識が一致した。また、中国製造業の発展に伴う国内産業の空洞化問題については、知識集約型産業の発展と伝統産業の再活性化に努める一方、新たな雇用の受け皿として、医療、福祉、労働、教育、観光など国内のサービス産業を充実していく必要があるとの意見が出された。

  4. 午後の分科会討議では、「貿易・投資・技術協力」、「金融(投資を含む)」、「環境・エネルギー・サービス産業」の3つのセクター別に、今後の日台企業間協力のあり方について意見交換を行った。

  5. 貿易・投資・技術協力分科会では、世界的な経済低迷と米国経済の減速により、日台双方とも輸出が落ち込んでいるとの紹介があった。また、中国大陸の経済発展とWTO加盟を受けて、中国大陸への日台共同投資の可能性について討議が行われた。さらに、日台間のFTAに関して、双方の民間でその可能性について研究してはどうかとの提案があった。その他、台湾側からは、日台共同のR&Dや、日本から台湾への技術協力促進機関創設などの提案があった。

  6. 金融分科会では、まず日台双方の金融情勢が報告された。日本側から、長引く景気低迷やデフレ下で不良債権処理の解決が遅れ、日本の銀行の業績は厳しい状況にあるとの紹介があった。台湾側からは、台湾の銀行も同様に、不動産の下落や台湾経済の不調の影響を受けているとの報告がなされた。また、中国大陸でのビジネスにおいて、日台双方の銀行がそれぞれの強みを生かしながらどのような協力が可能か、実例を踏まえながら意見交換した。これに関連して、中国市場での日台合弁企業の資金調達を容易にするため、大陸での株式上場の促進に努力してはどうかという提案が台湾側からなされた。

  7. 環境・エネルギー・サービス産業分科会では、日台双方から環境汚染、環境保全およびエネルギー問題への取組みに関し紹介があった。双方は、今後の経済開発において、政府、民間企業がそれぞれ環境保全と省エネルギーに努めることが不可欠であること、また日台双方の企業間で環境保全や省エネ対策に関する経験や技術の交流が必要であることなどの点で、認識が一致した。また、観光については、9月11日のテロ事件の影響があるものの、日台間の往来は盛んで、双方とも年間100万人を突破するのは近いのではないかとの発言があった。

  8. なお、今井会長と香西委員長は、会議に先立ち、12月5日に台北で陳水扁総統を訪問した。陳水扁総統は、12月1日に行われた立法委員選挙で、与党民進党が第1党になったことについて、2,300万人の台湾人が民主的改革による政治の安定と経済発展の2つを切望した結果だと語った。また、台湾のWTO加盟正式承認について、世界への窓が開けたようなもので、大きな意義があると述べるとともに、WTOの場を通じて台湾の実力を発揮していきたいと述べた。

  9. この他、12月6日の午後、香西委員長をはじめとする日本側の一部メンバーは、高雄市楠梓加工出口区内の日月光半導体製造社と、コンテナ港としては世界第4位の取扱量を誇る高雄港を視察した。

    今井会長(左)と辜濂松(こ・れんしょう)会長(右)
    台湾側主催レセプションにて


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