経団連くりっぷ No.162 (2002年1月10日)

なびげーたー

政治との情報ギャップ

事務総長 和田龍幸


昨年を振り返ると、いろいろ政治との接触場面が多く、それだけにあらためて政治とのつながりを考えさせる年だった。

昨年12月に入ってから自民党参議院の少数の先生方と懇談する機会があった。テーマは通常国会に提案予定の商法改正の問題である。席上ある先生から指摘されたことだが、経済界側からみれば大問題であっても、議員にとっては初めて聞く話だというような例がよくある。そのためこの法案を何としてでも通さなければ、という雰囲気がなかなか出てこない。問題が重要だというのなら、経済界も国会議員を含めマスコミ、国民の間にも共通認識が広がるようなPRをしたほうがいいのではないか、ということである。

昨年、経団連が取り組んだ事例を振り返ってみてもその通りとの感を強くする。例えば株主代表訴訟制度の改正がある。経団連の長年の働きかけもあって、ようやく昨年の通常国会に関連の商法改正案が提案されたが継続審議となった。続く先の臨時国会では、成立が心配されたが、会期末間際に自民党参議院の理解の深い議員の方々の努力で成立した。最後まで帰趨がはっきりしなかったのは、国会審議が立て込んでいたということのほかに、議員の間で関心の盛り上がりが弱かったことがあるように思う。先の話のように、今後情報格差を縮めるための幅広いキャンペーンのあり方が課題として残った。

もうひとつの例として地球温暖化の問題がある。議員の方々に京都議定書の問題点を説明しても、そんな話は初めて聞いた、なぜCOP3の時に言わなかったのか、ここまできた以上粛々と批准すべきだといった見解の人が少なくない。GDP当りではもっとも炭酸ガス排出量の少ない日本に、排出大国アメリカ抜きで、さらに6%の削減を義務付けようとする不平等条約的な案を率先して批准すべしとの主張はわからない。

ここにおいても、企業経営、国際競争力、雇用といった視点から問題を捉える経済界との間に大きな認識のずれがある。このような認識のずれをそのままにして法案の可否をいかに熱心に論じても解決策は見出せない。

もう一歩進めて言えば、これからは政策面だけにとどまらず政治と経済のつながりをもっと日常的なものにしておく事が課題であろう。経済界は先の参議院選挙で近藤剛氏を推薦し、幸いにも国会へおくることができた。候補者選出の段階で自民党との熱心な折衝があり、また選挙戦を進めてゆく過程では数多くの議員の方々の支援を受けた。この選挙を通じて、ある種の連帯感といったものが醸成されたように思う。

年頭に当たり、いろいろな面で政治との間合いを詰める努力が難局打開の支えともなることを期待したい。


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