社会貢献推進委員会(委員長 武田國男氏)/12月12日
企業活動を評価する基準が多元化してきた今、企業が社会との関係を構築する上で持つべき視点について、当委員会では一橋大学大学院商学研究科 谷本寛治教授に説明をきいた。その後、2000年度社会貢献活動実績調査結果を審議するとともに、今後の社会貢献活動の課題について懇談した。
市場は、抽象的なモデルとして成り立っているものではなく、そのベースに社会があり、政治・文化・国際関係などとの相互作用の中で存在している。企業もその基盤上で活動しており、市場社会の変化が企業活動に影響を与える。企業に期待される機能や役割は固定的ではなく、市場社会が企業に何を求めるかによって変化していく。
企業と社会のかかわりには以下の3つの次元があるが、(3) が根幹であり「社会的責任」を社会貢献だけの範疇で理解してはいけない。
もはや社会的責任と経済的成果は、二者択一ではなくなっている。1990年代以降、欧米では、社会的責任投資(SRI)やグリーンコンシューマー運動などにより、市場メカニズムの中に新しい評価基準ができあがってきた。企業は、単に財務的指標だけでなく、社会的指標でも評価されるようになり、そのための評価機関やNPOも登場してきた。また、インターネットによる情報発信・公開・共有が、その動きに拍車をかけている。今後、欧米の機関投資家がSRIの基準で日本企業をモニターする動きも活発になるだろう。このように、投資や消費の力による市場的取引の中で、社会的責任を果たす企業が評価されるようになる。資金的余裕があるからやろうということではすまない。基本的な経営活動の中で、社会的に責任ある行動が求められているのである。
今後、社会貢献という視点から、グローバル化、構造改革の時代における新しい企業価値の創造に資する手段の検討と環境整備に取り組む。たとえば、NPOとの協働、社会的責任に配慮した経営、ステイクホルダーズへのアカウンタビリティー向上などについて、新しいモデルを研究する。また、NPO支援税制、企業財団の運営など、実効的な社会貢献活動を行う上での環境整備に取り組む。