経団連くりっぷ No.162 (2002年1月10日)
経団連意見書/12月18日
情報通信委員会(委員長:岸 曉氏)では、昨年3月の「IT革命推進に向けた情報通信法制の再構築に関する第一次提言」に続く第二次提言として、「IT分野の競争政策と『新通信法(競争促進法)』の骨子」をとりまとめ、12月18日の理事会の承認を得て、政府・与党等関係各方面に建議した。以下は「新通信法」の骨子である。
- 法律の目的
いつでも、どこでも、誰もが合理的な料金で多様な通信サービスを自らのニーズに応じて迅速に享受できるよう、自由かつ公正な競争を促進することにより、利用者利益の最大化を図ることを法律の目的とする。
- 通信サービスの定義
通信サービスは、「利用される伝送設備が何であるかにかかわらず、利用者が指定した情報の形態・内容を変更することなく、利用者が指定した複数の地点間で伝送する能力を提供すること」とする。
- 通信サービスを提供する上での規律・ルール
(1) 通信サービスを提供する全ての事業者に対する規律
通信の秘密の確保および接続の義務、ならびにこれらの義務に反した場合の措置など、予め示された事業参入にあたっての要件に同意する事業者は、事業参入する旨を独立規制機関に通告する。
その際、公衆に対して通信サービスを提供する事業者は、ネットワーク・インフラの整備にあたって周辺諸権利との調整に必要な権利(いわゆる公益事業特権)を利用できるものとする。
(2) 支配的事業者に対するルール
- 独禁法による事後規制だけでは不十分で、「新通信法」に基づくルールによって競争を促進することが有効と考えられる市場の範囲を独立規制機関が画定する。
- 当該市場において、「通信サービスを提供する上で不可欠な機能を有することによって、あるいはその地位を利用して、料金やサービスの提供など当該市場への参入条件に継続的に大きな影響を与え得る事業者」を支配的事業者として独立規制機関が指定する。
- 上記 (1) の規律に加え、支配的事業者に対しては、技術革新の動向を反映した接続ルールを適用する。また、ネットワークの接続上不可欠な区間における管路等の設備の開放を義務づける。さらに、支配的事業者が不可欠な機能を他事業者に提供する部門と利用者に通信サービスを提供する部門を併せ持つ場合には、両部門間の機能分離(会計分離ならびに人員および営業等に関するファイアウォールの確保)を担保するための措置を講ずるとともに、小売料金に対し上限価格制を適用する。
- 支配的事業者がA.で画定された市場に隣接・関連する市場(例えば、ネットワークとの連結効果が生じ得る情報コンテンツの分野)に進出するにあたって、C.において機能分離を担保するための措置を講じた場合は、追加的なルールは要しない。〔C.において機能分離を担保するための措置を講じない場合は、完全分離子会社による進出を要件とする。〕
競争政策の推進体制
(1) 独立規制機関の設置
- 法律の目的を達成するための機関を置く。
- 同機関は内閣総理大臣の所轄とする。
- 同機関は透明な手続によって以下の職務を行う。
- 事業参入要件の提示、参入通告の受付
- 周波数、番号の管理
- 競争ルール(支配的事業者の指定・解除を含む)をオープンかつ透明な手続に従って策定すること(「申立(ペティション)制度」、法律の制定、裁判所の判決等に基づき)。
- 競争ルールを執行すること。
- 競争ルールに基づき紛争を解決すること。
- d.、e.のため、必要に応じて調査を行い、ペナルティを課すこと。
- 法令・競争ルールの運用状況を毎年公表し、定期的に見直すこと。
- 機関の委員長および委員は、独立してその職務を果たすこと。
- 委員長および委員は、内閣総理大臣が両議院の承認を得て任命すること。
- 委員長および委員の任期は5年とすること。
- 委員長および委員は在任中その意に反して罷免されないこと。
- 機関に事務局を置くこと。
- 国会に対し法律の施行状況を報告すること。
(2) 公正取引委員会の機能強化
公正取引委員会の機能強化に向け、組織の位置づけを見直すとともに(内閣総理大臣の所轄機関化)、陣容を強化する。
定期的見直し
競争ルールをはじめとする法制度の定期的見直し条項を設ける。
その他
NTTの経営に直接介入する規制および研究開発に関する責務は早急に撤廃するとともに、ユニバーサル・サービス確保、公正競争確保に必要な事項などを新法に統合、吸収することにより、NTT法を廃止する。
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