経団連くりっぷ No.162 (2002年1月10日)

新入会員代表者との懇談会(司会 和田事務総長)/12月12日

新入会員代表者より当会に対する率直な意見・要望をきく


経団連では、新たに入会した会員の代表者から、各企業・業界の当面する課題や要望等をきき、活動に反映させている。当日は新入会員代表者7名および今井会長、和田事務総長ほか事務局役員4名が出席し、率直な意見交換を行った。

○ 新入会員代表者発言要旨

  1. 静岡ガス 大石 繁 会長
  2. 地球環境問題への対応が喫緊の課題である。環境に優しい天然ガスの普及拡大を強く期待されており、ガス供給のインフラ整備に加え、コージェネレーション等の高効率なエネルギー利用普及のための人材育成など、ハード・ソフト両面の事業リスクを乗り越えねばならない。
    規制緩和が進み、自由化の範囲が拡大している。ガス事業法も3年後の法改正に向け、抜本的な自由化対策が検討されている。日本経済を活性化させる規制改革に当社も積極的に対応していきたい。しかし、自由競争が自己目的のみを助長し、企業の消耗を予測させるような論調が多いのは残念だ。
    エネルギーの安定供給はもとより、社会貢献活動を積極的に推進するなど、公益的使命がなおざりにならないよう心がけていきたい。

  3. 日本証券代行 遠藤勝裕 社長
  4. 当社は、証券会社からの株式の名義書換、各種事務代行等の事業を行っている。
    IT化とグローバル化への対応を迫られている。具体的には、ITの進展により、新しい顧客サービスの提供と効率的な業務改革が求められている。また、グローバル化により日本での出来事が世界中で様々な影響を及ぼす反面、世界各地の動向が日本へストレートに反映され、当社の事業にも大きな影響が生じる。世界の変化に目が離せない。
    構造改革は民間企業ではかなり進んでいるが、政治・行政の対応が遅れている。政治や行政は日本社会のリーダーであるとの自負があり、自らの遅れを認めず民間にいろいろ口を挟む面が見られる。企業は自らの会社を守るために、先に構造改革を進めており、そこにギャップや苛立ちが生じる。
    構造改革を考える上で、農政と不良債権問題の抜本的な改革は、最優先課題と考える必要がある。

  5. だいこう証券ビジネス 竹内 透 社長
  6. 構造改革が進み、間接金融から直接金融にシフトしていけば、証券会社がその中心的な担い手になる。米国には5,000社以上の証券会社があり、専門会社がバックオフィス業務を支えている。日本の証券会社は約300社で、当社の事業の認知度は高くないが、広義の証券決済の始めから終わりまでを支えており、直接金融を盛んにさせる重要なインフラだと自負している。
    証券決済の効率性や安全性が重視される時代に対応して、業務のシステム化に努めている。各地域の経済連合会はさまざまな活動を行っている。より連携を強化し日本経済全体の活性化につなげてほしい。

  7. 三陽商会 田中和夫 社長
  8. 当社は、衣料品全般と服飾雑貨を扱う総合アパレル企業である。消費者と直接向き合うことから、銀座8丁目に大規模な店舗をオープンした。BURBERRYとは30年来のビジネスパートナーの関係にある。
    業界の課題は、アパレル製品が全般的に景気の影響を受けやすい中にあって、二極化や多様化する消費者動向の見極めと、収益性のある新しいビジネスモデルをいかに構築するかということに尽きる。ファッション産業に不可欠な創造性、販売手法、ITによる効率化などのバランスをとりながら、顧客満足度を高め、個人消費を増やしていかねばならない。現在の経済状況は、中・高級品主体の当社にとって有利ではないが、過去の遺産を一掃し体制を強化したことなどから、善戦している。
    少子高齢化時代を迎えるが、消費者を直接対象としている性格上、人口構造の変化を見極め、21世紀に更なる飛躍を期したい。

  9. 土屋組 土屋智義 社長
  10. 当社は、岐阜県大垣市に本社を置く総合建設会社である。
    小泉内閣の下、大都市に公共事業が集中しつつある。道路を中心に、地方にはもう公共事業は必要ないという見方があるが、道路・下水道の普及が十分でない地域も多く、最低限のインフラ整備という面からも、まだまだ不十分である。
    官公需が先細りする中、当社の存在価値を、「付加価値を顧客に提供できる企業」と位置づけ、欧米企業との提携等を通して技術開発に努めている。また、急激な環境の変化に素早く対応できる社内の構造改革も進めているところである。
    今後の事業展開を図る上で、日本経済の方向性を見据え、的確に対処すべく経団連に入会した。

  11. パレスホテル 小林 節 社長
  12. ホテル業界は近年、売上が減少傾向にあり、本年も9月11日の米国テロ事件以降、底割れ状態だ。シティホテルは、宴会部門等の法人需要をベースにした収支構造になっており、社会環境の変化にあわせて、宿泊中心の欧米型経営への転換が迫られている。
    わが国の21世紀の課題として、雇用確保と外貨獲得が挙げられる。観光産業は外貨を稼げる上、多職種にわたっており、高度な技術や経験がなくても就業できる分野もあることから、雇用の受け皿になりうる点で優れている。旅行者がより便利で、廉価で、いかに価値あるものを得られるかが鍵となる。地方へ直接アクセス可能なハブ空港の整備や高速道路・鉄道運賃の引き下げなど総合的に観光インフラを整備する必要がある。
    製造業の空洞化が想像以上に進んでいる感を受けるが、外国人を日本に呼びやすく、住みやすくするためにも、世界に向けて対日投資ミッションを出してはどうか。

  13. 真空冶金 武黒洋一郎 会長
  14. 経団連は、自由かつ開放的な雰囲気の中、規律正しく運営されている印象を受けた。
    当社は超微粒子の開発と、半導体・液晶材料の製造を30年以上行っている。事業の性格上、学界や官界とも接触があり、産学官連携の必要性を肌で感じている。
    ハイテク産業の機器マテリアルではわが国は優勢だ。日本を世界最先端技術の中核とするためには、全産業を包含する形で、計画的に科学技術の振興を図る必要がある。
    青森県にクリスタルバレー構想があるが、国家戦略の一環として経団連も積極的に協力願いたい。


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