経団連くりっぷ No.162 (2002年1月10日)
防衛生産委員会(司会 高橋秀夫事務局長)/12月7日
米国同時多発テロ以降の国際情勢
−テイラー国際戦略問題研究所(IISS)米国支部長と懇談
防衛生産委員会では、国際戦略問題研究所(IISS)のテレンス・テイラー米国支部長より、米国での同時多発テロ以降の国際情勢について説明をきくとともに懇談した。同研究所は、1958年に設立された英国の民間シンクタンクで、安全保障に関する研究活動および「ミリタリー・バランス」等の出版活動は世界の外交・国防関係者の間で高く評価されている。
- テイラー支部長説明要旨
- テロに屈しない国際社会
今回、第2次世界大戦後では初めて、米国が宣戦布告により行った戦争であり、軍事行動の対象をテロ組織と支援国の全てとしている。
テロ以降、景気の後退期にもかかわらず、ウォール・ストリートは驚異的に回復しており、テロ攻撃があろうとも、自由主義経済体制は屈しないという強力なメッセージとなっている。
- テロに関係なく残存する国際問題
今回の米国における同時多発テロの発生に関係なく、朝鮮半島問題、中台問題、カシミールを巡るインド、パキスタン問題、中東問題、南米のゲリラ、組織犯罪等の国際問題は依然として残存している。
1980年代のソ連軍のアフガン撤退後、国際社会がアフガンに対する十分な対応を怠ったことが、アルカイダの暗躍、およびテロの発生を招いたことを考えれば、今後とも、上記の問題に対して、継続的に解決に向けた取組みを進める必要がある。
- テロに伴う世界情勢の変化
今回のテロ以降、世界的に大きな変化がみられる。第1は、世界中の政府、人々はテロに対して寛容ではなくなり、各国のテロへの対応措置が急速に進んでいる。
第2は、米ロ関係の変化である。ロシアは核弾頭の削減、米国の弾道ミサイル防衛構想に対して、理解を示している。また、NATOとロシアの関係強化、タジキスタン等への米軍の展開など、従来は予想されなかった関係強化が進みつつある。
第3に、今後、欧米をはじめ各国で防衛支出の増大が見込まれる。米国では、空軍の強襲能力や空・海の長距離攻撃の強化、弾道ミサイル防衛の進展等、欧州では、情報収集活動、ターゲットの捕捉、空中給油、空輸のサポート等の強化が見込まれる。
- 質疑応答(要旨)
- 経団連側:
- テロ対応を含め、米国ブッシュ政権と国連との関係はどうか。
- テイラー支部長:
- ブッシュ政権は発足当初、国連等多国間関係をそれほど重視しなかったが、テロ以降、アフガンの暫定政権の樹立など、国連の重要性を認識している。
現在、IISSはその活動基盤の強化のため募金活動を展開しております。
活動内容につきご関心をお持ちの方は下記までご連絡下さい。
(財)世界平和研究所 TEL 03-3222-0711
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