経団連くりっぷ No.162 (2002年1月10日)

WTOサービス自由化交渉に関する懇談会/12月20日

WTOサービス貿易自由化交渉
分野別自由化交渉に向けて


WTOサービス貿易自由化交渉について、特に「人の移動」、「電子商取引」等の具体的分野の論点を中心に外務省経済局国際機関第一課サービス貿易室の下川真樹太室長より説明をきくとともに懇談した。

○ 下川室長説明要旨

  1. 分野別交渉の準備:
  2. 12月のサービス理事会会合は4日間行われた。閣僚宣言を受けて各国の意識は完全にリクエスト・オファーへと移っている。2002年6月の初期リクエスト、2003年3月の初期オファーに向けてどのように準備を進めていくかが焦点となっている。また、公式会合の合間をぬって基本電気通信、電子商取引、海運、MFN、オーディオビジュアル等のフレンズ会合や四極会合も行われた。
    日本国内では、経団連等の協力を得つつ来年6月末の初期リクエスト提出期限に向けた作業を行っている。2月から具体的リクエストの作成に入り、4月に最終案をまとめて英文に翻訳する。リクエスト対象国は米、EU、加、ASEAN、中国、韓国、その他リクエストが上がってきた国になる。

  3. 「人の一時的移動」に関する議論:
  4. 途上国が重視している分野である。GATSの対象は「加盟国のサービス提供者である自然人および加盟国のサービス提供者が雇用する加盟国の自然人」に影響を及ぼす措置であり、「加盟国の雇用市場への進出を求める自然人に影響を及ぼす措置および永続的な市民権、居住又は雇用に関する措置」は対象外である。
    おおかたの国は、企業内転勤、専門性が高い専門職、商業用の訪問について約束している。今次交渉では、対象を「契約に基づく人の一時的移動」まで拡大するかどうかが焦点となる。また、上級管理職・高度専門職だけでなく単純労働者も受け入れるべきとの提案が途上国から出ている。その他、商業目的での短期滞在について、GATS加盟国共通のGATSビザを導入すべきであるとの提案がインド、欧州産業界、米国産業界等から寄せられている。

  5. 電子商取引の取り扱い:
  6. GATSの下では、電子商取引関連サービスは電気通信サービス(基本電気通信、付加価値通信)、音響サービス、実務サービス、流通サービス、金融サービス、娯楽・文化・スポーツ・サービス等に分類される。サービス自由化交渉においては、特にコンテンツの取り扱いが重要になる。分類如何により規制のかかり方や各国の約束状況が異なってくるためだ。EUは、電気通信サービスを経由して伝送されるコンテンツの提供サービスは、電気通信分野には含まれないとの立場を示しており、MFN免除を行っている音響サービスで取り上げる可能性がある。一方、米国は音響サービスに何が含まれるのか明確にし、コンテンツが電子的に伝送された場合でも技術中立性の原則が尊重されるべき旨提案している。


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