経団連くりっぷ No.163 (2002年1月24日)

なびげーたー

「強く求められる内外会計基準設定主体への協力」

経済本部長 角田 博


国際的には昨年4月に国際会計基準審議会(IASB)が、国内的には7月に(財)財務会計基準機構がスタートし、企業会計基準委員会(ASBJ)が活動を開始した。その活動を軌道に乗せるために財政基盤強化への協力と人材面での協力が強く求められる。

企業会計基準は企業の経済活動を開示する重要なインフラであるが、同時に企業経営そのものに対しても大きな影響を及ぼす。IASBは昨年4月から8月を除く毎月、3〜4日間の会合を開催し、会計基準の国際的統合を目指して、国際会計基準(IAS)の作成作業を進めている。米国もその活動に協力的であり、EUでも2005年から連結財務諸表をIASに基づいて作成することを決めているために、昨年7月に決定した9項目の検討課題について、めざましいスピードで検討を進めている。IASBの目指すものが単なる調和ではなく統合であるために、わが国の会計基準に対しても大きな影響を及ぼすものとみられ、議論の過程から早めに対応することが求められている。

例えば、合併などの企業結合の会計処理については、パーチェス法への一本化、のれんの償却禁止の方向で検討されているが、対等合併が多い日本の実態からして、持分プーリング法を残してほしい旨、IASBの山田理事、SACメンバーの八木日立副社長等から、働きかけているが、極めて難しい。

「業績報告」では包括利益計算書の導入を図ろうとしており、そうなると当期利益の概念がなくなり、われわれにとって相当違和感の残るものとなる。「ストックオプション」の会計基準では米国の経済界からも反対が強いがともかく検討が進められている。

こうした検討では毎回分厚い英文の資料が提出され、会議ごとに大きく議論が進むために、英語ができて会計のわかる人材が常に会合をフォローする必要があり、会員企業の協力が欠かせない。

さらに口を出すには金も出さなければならないということもあり、昨年は主要34社、13団体から約3億円の寄付をいただいた。今年も同様の拠出を行う必要があり、本年3〜4月を目処に主要企業の協力を仰がなくてはならない。

一方国内では、ASBJが毎月開催されるとともに、国際対応専門委員会でIASBへの対応について検討されている。また国内の会計基準の解釈指針を作成するために実務対応専門委員会が頻繁に開催されている。その結果、昨年末に自己株式および法定準備金の取崩・処分等の会計処理、企業年金法改正に伴う会計処理について、指針案が作成され、パブリック・コメントに付された。

同機構の会費は広く薄くご負担いただく方針であり、今年度分は手当済みであるが、来年度については2割程度の会員増加を図る必要がある。経団連の会員企業は大部分メンバーになっていただいているが、子会社や関連会社、各業界団体の企業の方々に是非働きかけをお願いしたい。


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