経団連くりっぷ No.163 (2002年1月24日)

ヨーロッパ地域委員会(共同委員長 森川敏雄氏)/12月20日

改革を進めるEU

−コラサンティ欧州委員会企業総局長との懇談会を開催


ヨーロッパ地域委員会では、さる12月20日、欧州委員会コラサンティ企業総局長を迎え、EUの重要政策課題について話をきいた。

  1. コラサンティ総局長講演要旨
  2. EUは2002年1月1日にユーロ紙幣の流通が開始し、EU拡大に伴ってEUの組織改革も予想されるなど、大きな転機に差しかかっている。このためEUは各国の国会、政府および欧州議会の代表6名からなる機構改革に関する評議会を設置し、EUの将来について検討を開始した。EUの機構改革には、活発でダイナミックなEU経済が必要である。EU経済をさらに活性化し、ダイナミックな知識ベースの社会を実現するためにさまざまな政策に着手している。
    欧州委員会では環境、衛生、食品安全などに配慮しながらも域内市場におけるモノとサービスの自由な流通を促進するとともに、金融市場の統合などのマクロ経済統合、競争政策の見直し、EU統一パテントの検討、司法制度改革などに取り組んでいる。さらに、2000年6月には中小企業憲章を発表し、中小企業支援のための10分野にわたる改革を加盟各国政府に提言した。
    加盟各国に対しては、

    1. 欧州委員会による加盟各国のパフォーマンスの相互比較・分析、
    2. 欧州委員会とEU加盟国が共同で行う詳細な分析、
    3. 加盟国自身による数値目標の設定と欧州委員会によるモニタリング、
    などによって、加盟国の改革努力を支援している。欧州は日米に比べイノベーション能力、経済成長などの点で劣っているが、加盟国の中には特定分野で高い能力を有する国もあり、EU全体としての能力強化の余地は大きい。
    EU加盟各国は今後もさまざまな改革に取り組むこととなるが、それには抵抗も予想される。欧州委員会は改革促進に向けた加盟各国の政治意思の強化に努力している。

  3. 質疑応答(要旨)
  4. 経団連側:
    経済統合では最終的には税制の調和が課題になると思われるがどうか。
    コラサンティ総局長:
    税制の調和はある程度進展したが、(国家主権の根幹に関わるため)各国の政治的関心が強い。今後は税制の調和による二重課税の排除などが課題になろう。

    経団連側:
    WTO交渉において、日本とEUが協力できる余地は大きいのではないか。またEU合併規則の見直し状況はどうか。
    コラサンティ総局長:
    同感である。WTOでは発展途上国の説得などでも日本とEUが協力できるのではないか。合併は事業の効率化などを通じて構造改革の推進に役立つ。合併規制の目的は、競争を阻害する合併を阻止することであり、合併規則の見直しに当たってもこれを念頭においている。

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