経団連くりっぷ No.163 (2002年1月24日)

OECD諮問委員会(委員長 生田正治氏)/12月26日

ますます高まるOECDの科学技術政策に対する産業界の貢献

−BIAC産業技術委員会報告会を開催


パリに本部を置くBIAC(民間産業界のOECDに対する諮問機関、Business and Industry Advisory Committee to the OECD)の産業技術委員会は、11の専門委員会の中で、唯一、日本人が委員長を務めている。そこで、佐野令而前委員長(松下電器産業技術顧問、2000年4月〜2001年11月)および石田喬也新委員長(三菱電機開発本部技師長、2001年11月〜)より、2000年の活動状況の報告をきいた。

○ 報告要旨

  1. OECDにおける議論
  2. BIAC産業技術委員会(CTI)は、OECD科学技術政策委員会(CSTP)に対して、科学技術政策に関する提言を行っている。CSTPを運営する事務局は、科学技術産業局(DSTI)である。
    OECDは、CSTPを中心とした2年間の検討の成果を、2001年6月に「ニュー・エコノミー:熱狂を超えて」と題するペーパーとしてとりまとめた。世界的に、「知識に基づく経済(knowledge-based economy)」への移行が進む中で、CSTPは、産業界の研究開発(R&D)投資による競争力強化策について検討を進めている。また、知的財産権に関しても2002年10月を目処に報告書を出す予定である。

  3. BIAC・CTIの活動
  4. CTIは、ローカル・イノベーションに関して、新たな科学技術による「オールド・エコノミー」の活性化、構造改革を目指した "Proposal for Narrowing the Gap Between New and Old Economies" と題する提言を2001年3月にとりまとめ、OECDに提出した。
    2001年12月に開催したCTI会議では、(1) 民間企業R&D投資戦略の変化、(2) イノベーションと知的財産権、(3) イノベーション・ケーススタディに関するOECDの活動をフォローするとともに、積極的に提言をしていくことを決めた。
    (1) に関しては、OECDが2002年12月を目処に報告書をとりまとめる予定であり、CTIとして作業への協力、インプットを通じた貢献をしていく予定である。
    (2) に関しては、2002年6月を目処に、発明の権利保護と科学技術の拡散による社会利益の拡大の双方のバランスをとった提言をとりまとめる予定である。
    また、CTI会議にあわせてDSTI幹部との懇談も行い、松尾局長から産業界との協力の必要性の高まりが指摘された。

  5. BIACとOECDの役割
  6. CSTPでは、産業界による貢献をより強く求めるようになっており、今後、CTIの役割はますます高まるだろう。
    長期的には、OECDは、デジタル・ディバイドの解消を含めて、世界中にあまねく科学技術の恩恵を与えるような政策提言を行っていくべきである。


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