経団連くりっぷ No.164 (2002年2月14日)

経団連第55回評議員会/1月28日
那須 評議員会議長

評議員会議長挨拶

現在の難局の打開に向け果敢な取組みを

那須 翔



構造改革を徹底し国際競争力を高めるべき

日本経済の現状を見ると、世界経済の減速の影響を受けて、企業収益は悪化している。海外に目を向けても、欧米企業との熾烈な競争が続く一方、中国をはじめとしたアジア諸国の急速な追い上げを受けている。このような大変厳しい経済環境の中、わが国が明るい展望を拓くためには、現在進められている構造改革を徹底し、企業あるいは産業の競争力を高めていくことが不可欠である。
企業、産業が競争力を強化していくためには、企業自らが、創造性を充分に発揮し、付加価値の高い製品や新しいサービスを生み出していくことが何よりも求められる。そのためには、企業法制や税制の整備をはじめ、多岐にわたる環境整備が必要であり、経団連では、自由闊達な経済環境の実現に向けた取組みを精力的に進めている。
その結果、昨年1年を振り返っても、長年の懸案であった連結納税制度の導入が決定し、また株主代表訴訟制度の抜本的見直しにようやく目処がつくなど、経団連の取組みは大きな進展があったと言える。また、行政改革、規制改革の更なる推進や、地球温暖化問題への対応、戦略的かつ総合的な科学技術政策の展開、さらには政治への対応など、経済界の置かれた立場を踏まえた的確な取組みの例を挙げれば、枚挙にいとまがない。
このように経団連は、具体的な課題の指摘にとどまらず、政府・与党へ強力に働きかけることで、その実現を図っており、今井会長をはじめとする執行部には、的確かつ迅速な判断のもと、経済界が直面する諸問題の解決に向け、尽力いただいている。あらためて敬意を表したい。

科学技術の振興に向けて

本日は、来賓として野依先生にお越しいただいていることもあり、特に、科学技術なかんずく産業技術の振興について、経団連の取組みを踏まえ、一言申しあげたい。
ご高承のとおり、わが国の科学技術政策は、政府の「科学技術基本計画」に基づいて展開されている。2001年度からスタートした現在の基本計画には、「科学技術により、付加価値の高い財・サービスを創出し、わが国の経済活力を維持することができる」、また「産業技術力の強化により、国際的な競争力を有する産業が育成される」、という2つの指摘が初めて含まれた。
この指摘に象徴されるように、経済政策、産業政策という面も勘案して、科学技術の振興を図るという取組みが、遅ればせながらようやく本格化しつつある。経団連としても、昨年来、特に科学技術基盤の強化と産学官連携に焦点をあて、科学技術の振興に精力的に取り組んでいる。基礎研究の重要性については、ここであらためて言うまでもないが、わが国企業自らが創造性を発揮し、技術革新を進め、国際競争を勝ち抜いていくためには、基礎と応用、さらには事業化のレベルに至るまで、研究の各段階において、産学官の相互作用を高めていくことが一つの鍵となる。同時に、科学技術分野において世界をリードしていくためには、産学官それぞれが、状況に応じた機動的な対応をとることも不可欠である。
しかしながら、実態を見ると、柔軟かつスピーディーな体制が、それぞれ必ずしも充分に整っているわけではない。そこで、産学官それぞれにメリットをもたらすような形で連携が推し進められれば、必ずや、わが国経済は再活性化し、豊かな社会の実現につながると考える。わが国の科学技術をリードされる野依先生には、わが国科学技術の更なる発展に、引き続き格段の尽力をお願いしたい。
また、エネルギー・環境問題、人口問題、食糧問題など、21世紀に人類が解決すべき全地球的な課題が山積している。わが国が有する、優れた科学技術を用いることで、これら問題の解決に貢献できると考える。経済界としても、技術開発を進め、このような地球規模の問題への取組みに対して、積極的に協力する必要がある。

今後の評議員会の活動

最後に、今後の評議員会の活動について、一言申しあげたい。評議員会は、定款に基づき、会長の諮問に答え、意見を述べるという役割をかねてより果たしてきた。本年度においても、議長・副議長会議、あるいは評議員懇談会などを通じて、当面の経済運営のあり方や構造改革への対応状況、さらには政治への取組みなどについて、今井会長をはじめ執行部と適宜率直な意見交換を行ってきた。
今般、経済界を取り巻く環境変化に適切に対応すべく、今井会長の英断により、日経連と統合することになったが、こうした評議員会の役割は、日経連との統合後においても変わりない。評議員各位には、統合後の新団体においても、引き続き、評議員会に係わる諸活動に支援・協力をお願い申しあげる。


冒頭申しあげたとおり、わが国経済をめぐる環境には、極めて厳しいものがある。こうした中、今年は4年に一度のワールドカップサッカー大会がわが国と韓国との共催で行われるなど、少ないながらも明るいニュースがある。このワールドカップ大会では、経済波及効果は3兆円を超すという試算もある。
このような明るい材料をも活かしつつ、現在の難局の打開に向け果敢な取組みを今井会長はじめ執行部にお願いする。


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