経団連くりっぷ No.164 (2002年2月14日)

アンケート調査結果

「雇用の現状と制度改革に関する緊急アンケート調査」結果を集計


産業問題委員会では、わが国企業の競争力強化の観点から、新たな雇用のあり方を検討するため、標記アンケートを2001年12月から2002年1月にかけて実施した。アンケートの対象は、経団連法人会員約1,100社とし、2月1日時点で307社(対象従業員数約180万人、平均従業員数5,871人)から回答があった(回収率27.9%)。以下は集計結果の概要である。

人員削減計画と人件費対応策

(グラフ1)各企業の国内における人員削減計画実施状況

アンケートの結果、企業がバブル期に膨らんだ人員や生産性の向上を超えて上昇した賃金を調整すべく、急ピッチで人員削減や人件費に係わる対策を講じていることが明らかになった。人員削減計画については、14%の企業が既に実施済であり、52%の企業で2000〜2002年度において削減中もしくは削減を計画している(グラフ1参照)。
また、66%の企業において人件費対応策をとっているとの回答もあった。具体的な対応策としては、賞与、賃金の削減や成果に応じた報酬制度の導入を行うとした回答が多く、総じて各企業が給与体系を大きく変化させていることが窺われる。
なお、人員削減計画を実施済、削減中、計画中、検討中と回答した企業は212社であり、その内人件費対応策を実施中、検討中の企業は204社であった。実に全体の約3分の2の企業が、人員削減計画と人件費対応策両方に着手していることとなる。以上から、今後も雇用調整、人員整理が進むことが窺われる。


雇用形態の多様化

人員削減計画や人件費対応策の実施以上に加速しているのは、雇用形態の多様化であった。派遣労働者の活用や有期雇用契約による採用などに加え、法制度上使いにくいとされている裁量労働制を採り入れている企業も少なからず見られた。
今後の施策としては、まずこれら制度を使いやすくするための規制改革が求められる。これらは、労働者側にとっても多様な働き方を許容するものであり、労使双方の意志により、柔軟な労働条件の設定・変更が可能となるようにしていくことが重要となろう。

ワークシェアリング

85%の企業がまだ導入しておらず、導入予定もないと回答している(グラフ2参照)。さらに、導入中の企業、導入予定企業の過半数が製造ラインで導入(予定)していることも明らかとなった。
導入中または導入予定のワークシェアリングのタイプは、雇用維持型が49%、次いでパートタイム労働者増加型、所定時間短縮型となっている(グラフ3参照)。
ワークシェアリングについては、業務分担の難しさや労働生産性の低下等を理由として、大半の企業が導入に否定的であった。
導入済みあるいは導入予定の企業でも約半分がいわゆる雇用維持型であり、新たな雇用創出には結びつかない取組みとなっている。

(グラフ2)ワークシェアリング導入の状況 (グラフ3)ワークシェアリングの導入タイプ

<参考>
雇用維持型:
一時的な景況の悪化を乗り越えるため、生産の減少に伴って残業の削減、休業の実施等により、賃金の抑制・削減を図りながら、皆で仕事を分担して行い、人員を削減せずに雇用を維持する方法。
所定時間短縮型(雇用創出型):
労使協定などを通じて所定時間を制度的に短縮し、雇用の創出を図る方法。
パートタイム労働者増加型(多様就業型):
パートタイム労働者等の短時間労働者を増やすなど、勤務の仕方を多様化させることにより、雇用を維持・創出を図る方法。

ちなみに人員削減計画・人件費対応策とワークシェアリングの関係では、半分以上の企業で、人員削減計画、人件費対応策に着手しつつもワークシェアリングを導入しておらず、導入予定もないとの回答を得た。
また、人員削減計画、人件費対応策に着手しつつワークシェアリングを導入済みまたは導入予定としている企業の平均従業員数が4,400人余となっており、アンケート回答企業の平均従業員数5,871人より少ない結果となった。

雇用保険制度

2001年度より料率引き上げと給付の見直しが行われた雇用保険制度について、企業はさらなる保険料率の引き上げを行い給付を拡充することよりも、現行料率を維持しつつ求職者の再就職につながる職業訓練を拡充することを求めている。


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