経団連くりっぷ No.164 (2002年2月14日)

起業家懇談会(座長 高原慶一朗氏)/1月22日

女性の働きやすい環境づくり、働く女性の視点を活かした事業展開が必要

−第5回起業家懇談会を開催


子供をもつ女性経営者であり、働く女性の支援活動などを行っている、コスモピアの田子社長、コティの水澤社長、ユニカルインターナショナルの佐々木社長を迎えて、事業展開の視点や経営上の課題等についてきいた。当日は、今井会長、上島副会長、出井新産業・新事業委員会共同委員長らが出席した。以下は、その概要である。

  1. 田子みどりコスモピア社長説明要旨
    1. 当社は、科学技術をわかりやすく伝えることを事業のテーマにしている。大学4年の時に創業し、今年で20年目を迎える。子供向けの科学サイト「かがっきーず」を一昨年から始めている。子供からの質問の多くは、開設当初予想した、乗り物の仕組みなど工学的なものよりも、地球を含めた宇宙の不思議や人間の体についてなど、生命の根源に関わるものが多い。子供の科学教育が非常に重要だと、娘を一人もつ母親の立場からも思う。若手の科学者や技術者には、父親も理科系だったという人が多い。遺伝もあるが、育つ環境が大きく影響している。幼少時に直接的に影響を与える母親が科学に強くなることは、非常に重要である。

    2. 同じ理数系の試験を、女子だけのグループと男女混合のグループで行うと、女子だけのグループより混合の女子の方が、点が低くなるそうである。「女性は男性より理数系に弱い」という思い込みが女子自身に影響するという。しかし最近では日本でも、理数系教育に力を入れる女子校が増えており、理数系に進む女子の数も増えてきている。女子に対する科学教育の充実は、企業の活力や子どもの科学教育の向上につながる。

    3. 社員の出産育児を奨励している当社では、業務をワークシェリングで対応している。バリバリ働きながら育児ができる環境の整備が急務だ。夫の転勤の問題もある。夫が転勤になると、妻は仕事を辞めざるを得ないのが現状である。

  2. 水澤佳寿子コティ社長説明要旨
    1. 企業の販促イベント等の企画の仕事をしていたところ、取引先のすすめもあって、有限会社を設立した。20代後半の一時期は、約400名のキャンペーンガールを抱える、北海道一の派遣オフィスとなったが、バブルの崩壊で売上は激減した。夫の事業の失敗も重なり、苦境に陥ったが、「少子化、出生率低下」という現象を手がかりにキャンペーンガールのうち、保育資格を持った8名をベビーシッターとして派遣する事業を始めたことが子育て支援サービス業参入のきっかけである。

    2. 命に代えても惜しくない子供を預かることはリスクも高いため、直後、株式会社化してこの仕事に専念した。少子化が進み、働く女性も増えた今日では、託児所を全国32ヵ所、今夏以降は東京23区にも展開する予定である。また、昨年秋、霞ヶ関の官庁街初の託児施設の運営を受託した。満員電車に揺られて子供を連れて来るのは大変ではないかと心配したが、利用者の声をきくと、家のそばにある託児所に18時までに迎えに行くことの方が大変だということがわかった。

    3. 今後、当社としては事業を次の2つの方向に展開していきたいと考えている。一つは、企業が福利厚生や顧客向けのサービスとして託児施設をもち、その運営を当社が請け負い、地域一般に開放することである。それによって、企業は少ないリスクで優秀な人材を確保し、かつ、社会貢献にもつなげることができる。もう一つは、母子が手ぶらで気軽に外出できるよう、コーヒーといっしょに離乳食、粉ミルク等を提供する「カフェミルクバー」を大型の商業施設や主要な駅に展開したい。

    4. 夢は、日本の少子化に歯止めがかかり、その裏にコティありといわれるような存在になること。少子化の原因は、一般に女性の高学歴化と、女性の社会進出による晩婚化が進んだからだといわれている。しかし、さまざまなことに制約されたり、我慢することなく子供が生み育てられるのであれば、女性は子供を産むはずである。キーワードは「ライク・ア・シングル」である。子供を産みたくないのではなく、産めないことが問題であり、この問題を事業を通じて解決していきたい。

  3. 佐々木かをりユニカルインターナショナル社長説明要旨
    1. 25歳で起業し、28歳の時、顧客の薦めで法人化したユニカルインターナショナルは16期目を迎える。

    2. 1987年に設立したユニカルインターナショナルは、2,000人以上のスタッフが登録する、70言語以上に対応したコミュニケーションのコンサルティング会社である。通訳や翻訳だけではなく広報、制作も含め企業の交渉力向上等のためのコンサルティングを行っている。一方、1989年にプロ意識をもつ女性のネットワークである、NAPW(Network for Aspiring Professional Woman)という任意団体を設立。さらに、1996年からは、600〜700人の働く女性が毎年参加する満足度98%という「国際女性ビジネス会議」を開催し、働く女性のコミュニティづくりにも取り組んでいる。女性は組織内にロールモデルが少ない。働く女性のコミュニティはこうした女性たちのメンター役を担っていけると考えている。

    3. 一昨年、消費に影響力のあるワーキングウーマンやワーキングマザーを対象としたコミュニティをウェブサイト上で展開するイー・ウーマンを設立した。日米ともに消費の8割は女性が決定している。特にワーキング・ウーマン、ワーキング・マザーは消費する力、決断する力をもっているが、従来のマーケティング調査はこの層に届いていなかった。しかもインターネットへの定額制常時接続環境が整い、ネット上での商品比較、情報交換が容易に行えるようになった。イー・ウーマンは企業などのニーズにこたえ、1〜2日という短時間で詳細な意見を集められるメンバー力を活用し、新しい消費者マインド・ニーズを集約、商品開発、広告・商品評価等の調査を行うとともに、企業イメージアップ、広告比較、新市場獲得の長期支援などのサービスを企業などに提供をしていく。


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