経団連くりっぷ No.164 (2002年2月14日)

アメリカ委員会(米国政治経済動向に関するセミナー)/1月23日

テロ事件以降、日米関係の重要性は増している


アメリカ委員会では、米国のPowell, Goldstein, Frazer & Murphy 法律事務所よりマイケル・ファイン弁護士を招き、米国政治経済動向に関するセミナーを開催した。

○ ファイン弁護士説明要旨

  1. テロ事件後の動向
  2. 9月11日で全てが変わったといわれるが、米国の国内政策や通商政策に大きな変化は見られない。他方、対外政策は変化し、安全保障がより重視されている。具体的には、

    1. 孤立主義の一部放棄、
    2. 対露・対中関係の改善、
    が見られる。米国は日米安保を安保体制の基軸と捉えており、安全保障が重視されることは日本にとっても好ましい。
    テロ事件直後には、連邦議会も超党派でブッシュ政権を支持し、国益のためには、政治対立を避けていた。しかし、それも終わりつつあり、財政政策や政府の役割等、9月11日以前の問題が再燃している。
    景気刺激法案は、昨年終わりに共和党優位の下院で可決された。年が明けて上院での審議が再開されるものの、民主党の強硬な反対が予想されるため、成立の見通しは立っていない。

  3. ブッシュ政権の通商政策
  4. ブッシュ政権は、通商政策の分野で、ドーハ閣僚会議における新ラウンドの立ち上げ決定、TPA(通商促進権限)の下院通過、ヨルダンとのFTA(自由貿易協定)締結等ある程度の成果をあげている。他方、今後数ヵ月、ホワイトハウスおよび議会が対処すべき課題としては以下の3点があげられる。
    第1に、TPAの成立である。TPAは、昨年12月に1票差で下院を通過した。上院でも可決されると見る識者も多いが、今後の審議の行方は未だ不明瞭である。TPAがなくとも実質的には大きな影響を与えないだろうが、交渉相手国からすれば、行政府に交渉権限がなければ譲歩は困難となる。
    第2に、FSC(外国販売会社)制度である。WTOは、同制度は輸出補助金にあたり、WTO協定違反と認定したため、EUは制裁発動も視野に、米国に早急な対応を迫っている。
    第3に、通商法201条に基づくセーフガードの発動の是非である。ブッシュ大統領は、鉄鋼業界やその労組よりセーフガードの発動を求められている。中間選挙対策もあり、関税率の引き上げ等、何らかの措置がとられることになろう。

  5. ブッシュ政権の対日政策
  6. 日米関係は良好で、その重要性は増している。ブッシュ政権の対日政策の特徴として、

    1. Win-Win 関係構築の希求、
    2. 民間による関与の増大、
    3. ハイレベルな交渉担当者による話し合い、
    4. 広範なテーマの議論、
    があげられる。小泉首相による構造改革はブッシュ政権から好意的に受け止められており、レッセ・フェールを基本とする同政権が日本の国内問題に介入する可能性は少ない。


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