経団連くりっぷ No.165 (2002年2月14日)

なびげーたー

むつ小川原工業基地と環境・エネルギー

常務理事 永松惠一


むつ小川原工業基地は、従来の石油備蓄基地、原子燃料サイクル施設、環境科学技術研究所等に加え、風力発電、先端分子生物科学研究所の建設など新たな胎動が始まっている。

新むつ小川原(株)は、一昨年8月に設立され、この3月に二期目を終える。幸い、本年度も実質黒字決算が見込まれているが、新会社発足に当たり多大なご協力をいただいたゼネコン、事業会社や金融機関の多くが赤字に追い込まれている状況を見るにつけ、頭の下がる思いであり、あらためて感謝を申し上げたい。

この2年間、さまざまなプロジェクトが動き出した。第1は、トヨタフローリテックの花卉工場である。東洋一を誇る温室から毎年400万鉢にのぼる各種の花が全国に出荷されている。第2は、AISという携帯電話用の反射型カラーフィルターの製造企業の進出である。このプロジェクトは、地元青森県に何としても産業を興したいというアンデス電気の安田社長の鬼気とも言える情熱によって実現した。また、県も速やかに期待に応え、オーダーメード型賃貸工場制度を創設した。県が主導するクリスタルバレー構想は、液晶産業を積極的に誘致する起爆剤を提供しており、AISに続く展開が期待される。第3は、22基/33,000kwにのぼる日本最大級の風力発電である。先般、一基が火災を起こし原因究明が急がれているが、年内に全基の建設が完了する予定である。新会社が所有する工業基地の隣地でも同様の計画が進んでおり、自然エネルギーの有効利用という側面の他に、現在企画中である産業観光の一つの目玉になろう。12〜3月は、事実上外回りの工事ができないハンディはあるが、その外にも、原子力安全管理施設など、種々の事業が進められている。

今後の具体的プロジェクトについては、決して楽観を許さないが、何と言っても熱核融合実験炉=ITERの誘致である。ITERは、太陽を人工的に地上でつくる夢のエネルギーであり、CO2を排出しないため、21世紀の最大の課題である地球温暖化対策の切り札となり得るものである。政府による国内誘致の決定、立地場所の選定、国際競争と多くのハードルが待ち構えているが、立地条件・環境の良さ、県による廃炉の受け入れ表明等を考慮し、是非、むつ小川原地区が選ばれることを期待している。また、高速の電子から放出される光を活用する放射光施設、複合リサイクル施設の建設等も検討中のプロジェクトである。

用地の新たな分譲にはつながらないが、資源・エネルギー政策の観点からは、プルトニウムを混入したMOX燃料の工場建設が重要である。一地域の住民投票に基づく知事の判断によって、軽水炉における同燃料の使用(プルサーマル)が延期されているが、同燃料の安全性は各国で実証されており、また現在の軽水炉でも、プルトニウムは燃えているのである。原燃サイクルシステムの確立は、国策として推進されるべきである。


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