経団連くりっぷ No.165 (2002年2月28日)

森山法務大臣はじめ法務省幹部との懇談会/2月6日

商法の引き続きの改正を求める

−商法改正の残された課題について懇談


経団連では、経済法制の改革に向けてさまざまな取組みを進めている。2月6日には、森山法務大臣、横内法務副大臣、下村法務大臣政務官はじめ法務省幹部と今井会長はじめ経団連幹部とで懇談会を開催し、通常国会に提出される商法改正案や、商法改正の残された課題をめぐり、意見交換を行った。経団連側は今井会長、片田副会長(進行)はじめ副会長、副議長、関係委員長、部会長などが出席した。

  1. 森山眞弓 法務大臣挨拶
  2. 法務大臣に就任して9カ月が経過するが、2つの国会で立て続けに3つの商法改正案の審議について、国会の答弁に立った。さらに今通常国会では締め括りとなる大幅改正を審議するよう準備中である。
    これだけ短期間に改正が相次ぐということは、企業をとりまく環境が激しく変化しているということを意味する。こうした中で経済の舵取りをしている経済界の皆さんの取組みをバックアップするべく、商法改正を推進する。

  3. 今井会長挨拶
  4. 経団連ではかねてより大競争時代における企業の競争力を高めていく上で、経済法制の機動的な再編、整備が必要と訴えてきた。政府・与党にはこうした期待に応え、昨年秋のストック・オプション制度の改善や会社関係書類の電子化などを内容とする商法の改正を実現していただいた。
    しかし残された課題もあるので、引き続きこれらにつき検討をお願いしたい。

  5. 横内正明 法務副大臣説明
  6. これまでの企業法制は、株主・債権者保護のための利害調整の観点から事前規制型であり、ときに過剰規制で、規制さえ守っていれば責任を問われないというものであった。しかし、今は経営者がリスクをとって大胆な判断をしなければならない時代であり、株主・債権者も自らリスクをとる時代である。企業法制も必要最小限のものとし、事後救済型へと移行する必要がある。
    こうした認識から、2000年9月に、当時の保岡法務大臣の指示を受けて、企業統治の実効性の確保、高度情報化社会への対応、企業の資金調達手段の改善、企業活動の国際化への対応の観点から、会社法制の抜本的な見直しをすることとなった。検討に当たっては法制審議会の委員を法律家以外の方々にも参加いただくようにした。また検討事項の中でも緊急性を要するものについては、当初の改正スケジュールより前倒しで改正をすべきということとなった。
    そこで昨年春の通常国会では金庫株解禁等を内容とする法律が議員立法により改正され、自己株式の取得・保有が原則自由となり、株式の大きさを自由に決めることができるように額面株式の廃止と単位株制度の廃止、単元株制度の創設が行われた。昨年秋の臨時国会では株式制度の改善、会社関係書類の電子化が閣法で行われた。また議員立法でコーポレート・ガバナンスに関する改正が実現した。
    今通常国会では大改正の締めくくりとして会社機関関係、会社計算関係などを柱とする商法改正案が提出される予定である。また社債等のペーパレス化法案も提出する予定である。
    株券不発行のための制度、公告一般の電子化、商法の現代語化などが、今回の改正の積み残し課題として残っており、今後、法制審議会で検討していく予定である。企業法制の一番のユーザーである経済界の協力、理解をお願いしたい。

  7. 経団連側発言
  8. 経団連側からは通常国会に提出される商法改正案について、「外国人株主が増加する中で、招集通知を早期に発送できるようにすること、株主総会の特別決議の定足数を緩和することなどは評価できる」「社外取締役の一律義務化を見送り、選択制としたことは評価できる。しかし社外取締役を置いた会社ほどガバナンスが行き届いており、利益処分権限を総会から取締役会に委譲できるとの考え方はおかしい。いずれのタイプのガバナンスを選択しても権限委譲ができるようにすべきである」、「商法開示と証取法開示の統合を図ることは評価できる。個別ベースの記載事項については今後詰めさせてもらいたい」といった意見、要望が出された。
    また、昨年行われた改正の積み残し事項として「自己株式取得を定款により取締役会に授権できるようにしてほしい」、「単元未満株式の共益権の制限について端株同様のものとするよう、見直しをすべきである」、「米国の制度に比して、取締役の責任制限についてはハードルが高い」、「社外監査役に欠員が生じた場合に備えてあらかじめ補欠選任できることを明確にすべき」といった発言があった。
    さらに、残された課題として「米国にあるLLC(リミテッド・ライアビリティ・カンパニー、出資者が有限責任で、課税が出資者レベルで損益通算される仕組み)と同様の制度を導入に向け、早急に検討を進めるべきである」、「ニュービジネスが湧き出るような規制のリニューアルが必要である」、「法律が足枷とならないよう、改正後も絶えず見直すべきである」「閣法と議員立法の連携を強化すべきである」等の発言があった。

  9. 下村博文 政務官締め括り挨拶
  10. 本年1月8日に政務官に任命された。小泉内閣は聖域なき構造改革を掲げている。会社法制がわが国の再生の足枷になってはいけないので柔軟な法整備が必要である。高度情報化社会、国際社会の中で皆さんがイコール・フッティングで競争できるよう機敏に対応してまいりたい。


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