経団連くりっぷ No.165 (2002年2月28日)

第38回四国地方経済懇談会/1月30日

構造改革の推進と四国地域の新たな飛躍に向けて


経団連・四国経済連合会(四経連)共催の標記懇談会が松山市において開催された。地元経済人約120名の参加のもと、経団連側は今井会長、香西・上島・西室の各副会長、秋元資源・エネルギー対策委員長が出席し、四経連首脳と意見交換を行った。また、懇談会に先立ち石井工業を訪問し、柑橘類を瞬時に仕分けする高性能選別機等を視察した。

  1. 四経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      近藤耕三 会長(四国電力会長)
    2. 自立した四国づくりに向けて重要なのは、第1に、4県や産学官レベル等での連携の推進である。現在、4県都を結ぶXハイウェイの整備によって、互いに連携して活性化に取り組もうという機運が高まっており、こうした実績を積み重ねたい。
      第2に、他に真似のできないものをつくることである。四国では、独自の技術を活かし、日本一、世界一のシェアを誇る企業が増えている。こだわりのある企業を増やすことが四国の自立に必要である。
      第3に、競争社会の激化により倒産や失業が増加する中、国民の不安感を軽減する上から「良い競争社会」をつくることである。わが国が再び飛躍するためには、人間の能力を高め、活力を引き出す、良い競争社会への改革が重要である。

    3. 四国経済の現状と課題
      水木儀三 副会長(伊予銀行会長)
    4. 現在、わが国経済は景気後退と物価下落の連鎖にはまり込み、戦後最悪の不況となる公算が大きい。今年は景気の底割れを防ぎつつ、いかに構造改革を実行するか、日本経済の再生に向け正念場となろう。
      四国経済の現状については、電気機械関連等でIT不況と生産拠点のアジアシフトにより大きく落ち込み、多業種で減産の動きが広がっている。個人消費は総じて低調で、完全失業率も北海道と同じ5.6%まで上昇している。四経連が実施する景気動向調査でも景況感は過去最悪となっている。
      四国経済の不振は、グローバル化の進展による地域産業の空洞化という構造要因に起因している。当面の課題は、(1)新技術、新産業の創出、(2)人づくり、(3)内なる国際化であり、激化する地域間競争に打ち勝つためにも、四国が一体となって「新しいくにづくり」に取り組んでいく必要がある。

    5. 広域連携の強化による地域活性化
      住友俊一 副会長(阿波銀行会長)
    6. 四国においては、4県都をX字型に結ぶ高速道路の完成により、一体となって地域活性化を図ろうという動きが広まっている。また、産業活性化の面でも、四国の大学が結集した四国TLOなど産学官の連携が図られている。さらに、四国霊場八十八ヵ所をはじめとする四国の歴史・文化、自然を多くの人に触れ親しんでもらうため、4県とJR四国等が連携して四国観光立県推進協議会等を通じた取組みを行っている。
      また昨年、四経連は、「長大橋を活かした地域活性化」をテーマに、デンマークとスウェーデンを結ぶオーレスンリンクを視察した。両国の社会的・経済的な協力体制づくりを範とし、四経連としても、本四3橋を最大限に活用すべく、橋を介した広域都市圏の形成に取り組んでいきたい。

    7. 新たな時代の社会資本整備
      立田敬二 副会長(立田回漕店会長)
    8. 構造改革の大きな柱の一つとして、社会資本整備の見直しが行われているが、効率性、採算性ばかりが重視され、社会資本の整備がどうあるべきか、という議論がおろそかになっており憂慮している。
      社会資本整備にあたっては、

      1. 国土の均衡ある発展はこれまで以上に重要性を増すこと、
      2. 社会資本整備のメリットは広範囲に及ぶこと、
      3. シビルミニマムの確保が不可欠であること、
      を認識する必要がある。四経連としては、地域自らが将来像を描き、そのために必要な社会資本整備を考え、効果的な整備を提案していきたい。

    9. 四国広域観光の新たな展開
      梅原利之 副会長(四国旅客鉄道社長)
    10. 四国の観光客数については、瀬戸大橋開通前までは2,100万人前後で推移していたが、開通した1988年には1.4倍の2,800万人まで増加した。その後、1998年の明石海峡大橋、1999年の瀬戸内しまなみ海道の開通により3,000万人を超えた。しかし、これら架橋の効果は1年しか続かなかった。
      昨年、米同時多発テロの影響により海外旅行が大幅に減少し、国内旅行へとシフトしたが、恩恵を受けているのは北海道や東京ディズニーシーなどに限定され、四国へのシフトはほとんどない。
      四国の人口は約420万人であるが、少子高齢化が全国より10年先行しており、今後定住人口はさらに減少するであろう。従って、地域の活性化のためには交流人口増大の大きな柱となる観光の振興が重要であり、官民を挙げて「歴史・文化道」の推進などに取り組んでいきたい。

    11. 人に優しい街づくりへの取組み
      石川富治郎 副会長(伊予鉄道会長)
    12. 高齢化時代を迎え、高齢者等にとって優しい街づくりが急務となっている。このため、バリアフリー化等の取組みに加え、交通弱者のための公共交通機関の利便性を向上させることが重要である。
      しかし、ここ10年間、四国における乗合バスの輸送人員は全国平均約26%減に比して約42%と減少している。伊予鉄道では、サービス充実、乗客増加に向け取り組むとともに、歴史を感じさせる街づくりという観点から、「坊ちゃん列車」を運行し、観光客に好評を博している。今後とも、交通弱者を念頭に置いた公共交通機関の復権を目指していきたい。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 西室副会長より医療制度改革と今後の課題、秋元資源・エネルギー対策委員長より環境・エネルギー問題について説明があった。また、香西副会長より地方主権の実現を通じた地域の自立的発展、上島副会長より最近の対外経済交流の取組みについて説明があった。
    最後に今井会長より、四国におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として構造改革の推進に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。


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