経団連くりっぷ No.165 (2002年2月28日)

経済法規委員会経済法規専門部会(部会長 西川元啓氏)/2月1日

会社更生法の抜本改正が進行中

−法制審議会倒産法部会の検討状況についてきく


法制審議会倒産法部会では、2002年秋の臨時国会に会社更生法の抜本改正案を、2003年秋の臨時国会に破産法、倒産実体法の抜本改正案を提出すべく検討を進めている。同部会では2月にこれまでの議論を総括し、その結果を踏まえて会社更生法改正要綱試案をとりまとめ、パブリック・コメントを経て、法案の策定に当たる予定である。
倒産法制改正の動きをフォローしてきた経団連経済法規専門部会では、2月1日、法務省大臣官房の深山卓也参事官を招き、会社更生法の改正要綱の担当者素案(第1次案)について説明をきくとともに意見交換した。

○ 深山参事官説明

法制審議会倒産法部会で議論している担当者素案(第一次案)は会社更生法の構成に沿い、以下のような案を検討している。

  1. 総則関係
  2. 更生事件は、主たる営業所で管轄するが、本店所在地の管轄裁判所でもできることとし、また親子・連結親子会社が共に更生手続にある場合は、いずれかの裁判所に管轄を集中できる。さらにこれにかかわらず、更生手続開始の申立ては専門家の多い東京地裁、大阪地裁にすることができ、必要あるときに移送してもよい。
    送達・公告・通知・登記・文書閲覧等についても実態に合わせて合理化・廃止、あるいは会社更生法の基本法である民事再生法の規定と同様とする。
    更生手続開始前の牽連破産の場合につき、民事再生法同様、共益債権の財団債権化を図り、DIP(Debtor In possession, 占有継続債務者)ファイナンスを容易にする。更生手続に関し必要な事項は会社更正法のほか最高裁判所規則に委任して定める。

  3. 更生手続の開始関係
  4. 民事再生法同様の包括的禁止命令(債権・担保権に基づく強制執行等を一律に禁止する命令)を出せるようにする。民事再生法の場合と異なり、会社更生法による命令では担保権実行も禁止される。ただし一定範囲の更生債権は命令の対象から事前に除外できる等の措置を講じる。
    保全段階において、債権者等の権利行使を中止した手続を取り消す制度を民事再生法並みに整備する。保全段階において商事留置権を消滅させることができるようにし、例えば倉庫業者に原材料等が差押えられている場合でも代金を弁済することにより、事業が継続できるようにする。
    更生手続開始の条件として、これまでの裁判所の運用は事実認定に当たり、さまざまな角度から検討し、関係者からの意見聴取などを行い、更生の見込みがあるかを慎重に調査していたため、申立てから開始までに半年程度かかることが普通であった。改正後は民事再生法並みに更生手続の開始(入口)段階では間口を広げ、計画の認可(出口)段階を厳しくすることとする。
    株主に対する送達は債務超過の場合は要しないこととする。また、労働組合・使用人代表の手続関与を民事再生法並みとする。法務大臣・金融庁長官の手続関与規定は削除する。営業譲渡については、更生計画認可前は裁判所の許可を得て管財人ができることとする。
    手続開始後の取締役・監査役の報酬については請求できないこととし、取締役の競業行為については管財人の承認事項とする。

  5. 更生手続の機関関係
  6. 取締役を管財人に選任することは現行法上も可能であるが、基本的に経営陣を関与させない運用がされてきた。この考え方を修正し、違法行為等をしておらず適任であれば、取締役でも管財人に選任できることとする。
    管財人が数人あるときの職務執行は民事再生法同様とする。管財人等には更生会社の子会社調査権を与える。保全段階に監督委員に共益債権化を承認させたり、管財人選任のための意見書の提出をさせたりする。

  7. 更生債権等の各種の権利取扱い関係
  8. 更生手続開始後でも、少額であってその弁済が事業の継続に不可欠な更生債権等は弁済できることとする。また、劣後的更生債権の規定を見直す。さらに、担保権の実行としての競売禁止の一部解除の制度を設けることとする。
    更生債権・更生担保権の調査確定手続を合理化し、更生担保権に係る担保目的の価額の争いについて決定手続により簡易迅速に解決できるようにする。
    更生会社の社債権者については、議決権行使の届出制を設け、届出しない社債権者は関係人集会の議決権数(定足数)から除くこととする。多数の債権者等がおり代理委員を選ぶべき場合には、裁判所は代理委員を選ぶよう命令でき、それでも選任しない場合は職権で代理委員を選任できるようにする。また、関係人集会の内容を民事再生法同様のものに改める。
    サービサー等による権利行使のニーズを踏まえ、議決権の一部行使を認める。民事再生法の債権者委員会同様、関係人委員会に手続関与を認める。社債管理会社の費用償還請求権・報酬請求権の共益債権化を認めることとする。

  9. 更生会社の財産の調査・確保関係
  10. 財産評定・更生担保権に係る担保権の目的の評価は手続開始時の時価によるものとする。

  11. 更生計画関係
  12. 更生債権等の弁済期間は20年から15年に短縮する。一方、更生計画に基づいて発行する社債の償還期限は制限せず、債権を超長期社債に置き換えることを認める。
    更生計画に基づく新株発行の不合理な規定は削除する。裁判所が定める更生計画案の提出時期を開始後1年以内として、手続を迅速化する。また、書面投票、書面決議を導入する。更生計画の可決要件を緩和する。更生計画認可決定に対する株主の即時抗告を原則として認めないこととする。

  13. 更生計画認可手続、更生手続廃止関係
  14. 更生手続終結の要件を緩和する。更生手続終了により査定手続も終了することを明定する。更生手続開始の申立てにつき棄却決定後、破産宣告までの間財産を保全できるようにする。


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