農政問題委員会企画部会(部会長 松昭雄氏)/2月5日
当部会では、今後のわが国農政のあり方に関し検討を行っているが、多様な担い手の確保や生産性の向上という観点からは、法人化の推進が重要である。総合規制改革会議の第一次答申においても、農地法に係る規制緩和が求められている。そこで、日本農業法人協会の坂本多旦会長を招き、農業生産法人の現状および課題などについて説明をきくとともに、意見交換を行った。
人口増大、食糧確保、環境保全等を考えると、競争一辺倒ではなく、協調とバランスさせる時代へと向かわざるを得ない。また、家単位から個人単位の時代に転換しつつある中、農業・農村の継承も家から組織へ、さらに相続から職業へと考え方が変化していくであろう。
(1) 消費と生産のミスマッチ
現在の農業・農村が抱える問題点は、消費構造と生産構造のミスマッチにある。消費者の需要動向は、高価格消費20%、中価格消費30%、低価格消費50%と多様化しているが、農業生産はこの需要変化に対応できていない。現状では、高価格生産70%、中価格生産20%、低価格生産10%となっており、これは農家が社会政策に依存し小規模で画一的な生産・販売を行ってきたことを物語っている。
食品業界はこうした需要の多様化に輸入等をもって迅速に対応した。消費者の「なぜ欲しいものをつくらないのか」という主張に対して、農業者は「なぜ多少高くても買わないのか」という姿勢を取り、対立の構図となってきた。
(2) 食料自給率向上に当たっての課題
政府は食料自給率の向上を目指しているが、
(3) 担い手および農地利用の問題点
農業サイドでは、法人経営体などの経営財務体質が脆弱であるばかりか、「競争・協調」の仕組みが確立されていないことが問題である。
また、農地利用についても、全国の平均経営規模が1.5haと、非効率的で高コストな利用形態となっている。
さらに、農業生産額と農外収入が急速に減少し、農村地域の維持が困難になっている。農業・農村のハード面での基盤整備は進展したが、それを有効活用するソフト面での運営システムが確立されていないことも問題である。また、農地の財産的所有意識と過剰な米生産特化を惹起している。農村集落の「掟」が若者の理解を阻害していることに対しても対応が必要であろう。
人口増大、食糧確保、環境保全等を考えると、競争一辺倒ではなく、協調とバランスさせる時代へと向かわざるを得ない。また、家単位から個人単位の時代に転換しつつある中、農業・農村の継承も家から組織へ、さらに相続から職業へと考え方が変化していくであろう。
(1) 新しい農業構造の確立
以上の農業・農村が抱える諸課題を認識した上で、「適地・適作」を基本としつつ、価値に対する価格形成を図りうる新しい農業構造を確立することが重要である。
第1に、付加価値化農業の確立である。すなわち、都市近郊やコスト農業に不利な地域で地産・地消をベースに、小規模で付加価値の高い農業、さらに小規模連携の流通・販売体制を推進することが重要である。
第2に、計画生産農業の確立が求められる。具体的には、平場地帯がある純農村地域において生産連携システムをつくり、契約に基づく生産・販売体制を構築すべきである。
第3に、大規模低コスト農業の確立である。大規模平場地帯がある地域では、大規模500ha以上の低コスト農業を確立し、生産は株式会社など会社形態とする。そして、低コスト農業・低コスト技術によって、日本の米を市場販売に耐え得る農作物として流通していく。
また、生命総合産業ともいえる農業においては、生産1次、加工2次、販売3次を掛け合わせた「第6次産業化」により、新たな事業創出が期待される。
(2) 流通・販売体制の確立と法人化推進
併せて、「誰がどこでどう食べるか」を見極め、経営形態・生産技術・流通・販売などの一貫システムを確立するとともに、専業経営体の財務体質を強化し、農業経営の法人化を推進していくことが肝要である。とりわけ農業者や経営体の多様化に対応できる組織を設立することによって、農業経営をサポートする仕組みが必要となろう。
(3) 循環型環境保全農業の確立
環境・リサイクル社会への対応として、農業生産における副産物、すなわち未利用資源を効率的に活用するシステムの構築が求められる。例えば、生ゴミ資源の飼料化、堆肥化、エネルギー化を図ることによって、都市と農村を連携することが可能となるのではないか。
農業構造改革を実行するに当たっては、