社会貢献担当者懇談会「変化する企業と社会貢献」(座長 島田京子氏)/2月1日
近年、企業経営において重要視されている「ブランド」形成に資する、社会貢献活動のあり方について検討するため、欧米企業におけるブランド・マネジメントの現状と日本企業のブランド戦略等について、経済広報センターの遠藤博志 常務理事、オムロン小山 博 広報・渉外室部長からそれぞれ説明をきくとともに意見交換した。
経済広報センターでは、1999年以降3回にわたり欧米に企業広報調査ミッションを派遣した。共通するキーワードは、レピュテーションとブランドだった。
グローバル化、情報化(情報の氾濫)、製品・サービスの同質化、M&Aの活発化などの影響で企業間の競争が激化している。これらを背景に、企業イメージの向上、カスタマー・ロイヤルティの向上、他社との差別化などの要請が高まっている。
また、企業価値に占める有形資産の割合が過去20年間に変化している。企業価値に占める有形資産の割合は、アメリカのブルッキングス研究所とMITの調査によると、78年に83%だったものが、1998年には31%に下がっている。無形資産の主な構成要素は、特許権、ブランド、ノウハウなどであるが、最近はブランドが注目されている。
ブランドが重要だとすれば、ブランドをどのように評価するかが課題となる。インターブランド社の評価プロセスが有名で、同社のブランド・ランキング第1位のコカ・コーラ社の場合、株式時価総額に対するブランド価値比率は61%となっている。
しかし、無形資産がもたらす利益、ブランドの貢献度、ブランドリスクの算出は難しい。そのため、無形資産のオンバランス化も難しく、資産計上するまでには至っていない。
一方、エンロン社の問題などもあり、企業の財務内容をより実態を表すものにするために、無形資産に関する情報をもっと開示すべきという議論が、アメリカの財務会計基準審議会で始められている。
ミッションの訪問先には、レピュテーションとブランドの関係を同じようなものと見る人もいれば、明確に違うものと主張する人もいた。British Telecommunications などでは、ブランドはレピュテーションの一部であるとの説明を受けた。ブランドは顧客等の経験に基づいて形成されるものであり、そう簡単には崩れない。一方、レピュテーションはあらゆるステークホルダーズのパーセプション(認知)によって形成されるものであり、メディアの影響が大きく崩れやすい。
コーポレート・レピュテーションはステークホルダーズとの関係で構築されるものであり、
アメリカでは、消費者の3分の2は同じ性能の商品があった場合、地域社会に貢献する活動をしている企業の商品を買う。個人投資家や従業員も社会貢献活動に関心を持っている。もはや、社会貢献活動は、「すれば好ましいこと」でなく、「しなければならないこと」として捉えられているときいた。地域社会が必要としているものを把握して、地域社会を真に向上させる行動をとることによって人々の企業に対する印象を形成することが重要である。訪問先企業の多くが、地域に密着した社会貢献活動を意識的にやろうとしているとの印象を持った。
オムロンが、ブランド戦略に真剣に取り組んだ理由は、会社のアイデンティティが希薄化し、社内外に特性を適切にコミュニケーションすることが困難になってきたからである。ブランド認知調査、コアコンピタンス分析を行った上で、「センシング&コントロール」をコアコンピタンスに、「ソーシャルニーズ創造」を会社のDNAとして、ブランド戦略構築に取組みはじめた。
オムロンのブランド戦略は、10年後のビジョン「GD2010」で策定された経営戦略を、ステークホルダーへのベネフィットの視点で表現したものである。ブランドの基礎となるブランド・プラットフォームでは企業姿勢と企業価値を "Sensing tomorrow" というコーポレートステートメントに集約することで表現しており、事業や社員一人ひとりの行動を通して、ステークホルダーズに伝達していく。
ブランドの根底には、オムロンの経営理念である「企業の公器性」という考え方が組み込まれており、ブランド・プラットフォームにも位置づけられている。企業の公器性には、事業を通じた「経営の公器性」と、社会に貢献する「社会の公器性」がある。社会福祉、科学技術、文化芸術、地球環境の分野で展開している企業市民活動は、ブランドにも根づいているという認識を社員が共有できるようにするとともに、ステークホルダーズにも伝達しようとしている。