経団連くりっぷ No.166 (2002年3月14日)

なびげーたー

構築が急がれる東アジア経済連携の枠組み

国際協力本部長 工藤高史


中国とアセアンとの自由貿易協定(FTA)締結の動き、日本が打ち出したアセアンとの包括的経済連携構想。東アジアにおける経済連携の枠組みは、いかにあるべきか。

中国のWTO正式加盟を目前にした昨年11月、アセアン諸国と中国は「今後10年以内にFTAを締結する」との合意に達した。このニュースがわが国に少なからぬ衝撃を与えたことは否めない。すなわちわが国は、初めてのFTAをシンガポールとの間で実現させたものの、その他の国とのFTA推進に大きな問題を抱えているからである。

中国とアセアンとのFTAは、WTOルールで認められた途上国条項が適用されるため、「実質上すべての貿易」に係る関税を撤廃する必要はなく、いわゆるセンシティブな分野を協定の対象から除外できる。従ってFTA実現の可能性は高い。まさに日本の庭先と思われたアセアン市場が中国市場と統合し、日本製品に代って中国産品が同市場を席捲するのではないかと懸念する向きも少なくない。

経団連では、わが国が貿易立国として今後とも繁栄を享受していくためには、WTOによる多角的アプローチに加え、地域的あるいは2国間ベースの自由化アプローチが重要であると訴えてきた。2国間の自由化推進の観点からは、シンガポールとのFTA締結交渉を後押しし、日本政府へ具体的な要望事項を伝えるなどの協力を行った。また、韓国さらにはメキシコとのFTAを実現すべきだと主張してきている。

東アジア経済の拡大策については、2000年11月に開かれたアセアン・プラス3(日中韓)の首脳会議において東アジア経済圏設立の構想として議題にのぼり、今後の検討課題となっていた。その後、この構想の実質的な討議は行われない中で、中国とアセアンとのFTA構想が先行する形となった。わが国政府は早速これに対応し、小泉総理が本年1月に東南アジアを訪問した際、アセアンとの包括的経済連携構想を提唱した。誠に時宜を得ており、同構想を早期に具体化することが望まれている。

アセアンと中国のFTA締結の動き、そしてわが国のアセアンとの包括的経済連携構想を受け、経団連では目下、アジア大洋州地域委員会企画部会(長谷川部会長)において、アセアンとの連携強化のあり方に関し鋭意検討している。また中国委員会企画部会(勝俣部会長)では、中国製造業の台頭とアジアの国際分業体制に及ぼす影響というテーマで検討を行っている。東アジアにおける各国の共存共栄をいかに図るかが、両部会に共通したテーマでもある。

今後の東アジアの経済を展望する時、中国と同時にWTO加盟を果した台湾の存在を無視することはできない。従って、この地域の経済連携の枠組みはアセアン・プラス4(日中韓台)を基本とすることが望ましく、わが国がその構築に向けたイニシアティブを発揮すべきだと考える。


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