経団連くりっぷ No.166 (2002年3月14日)

ヨーロッパ地域委員会(共同委員長 森川敏雄氏、佐々木元氏)/3月1日

拡大と統合に向けて前進する欧州

−駐欧州各国大使との懇談会を開催


さる3月1日、ヨーロッパ地域委員会では、欧州大使会議で一時帰国中の駐欧州各国の大使を迎え、大使会議の模様ならびに、欧州、CIS情勢などについて話をきくとともに、意見交換を行った。

  1. 植竹外務副大臣挨拶
  2. 昨今の外務省をめぐる不祥事につきお詫びを申しあげる。昨年はWTO新ラウンドの立ち上げ、ユーロ貨幣の流通開始など経済面でも大きな変化があった。官民の連携により、欧州との関係強化を図りたい。

  3. 欧州大使会議の模様について
  4. 北島経済局長

    欧州大使会議では、

    1. 外務省改革(日系企業への支援強化)、
    2. 日欧関係のあり方(アジアとの連携強化を背景にした日欧関係の強化や、国際的なルールメーキングにおける日欧協力)、
    3. 日欧関係の強化(貿易投資分野や、経済構造改革・規制改革等の分野における官民協力)、
    4. 日本経済に関する広報(欧州知識人に対する広報の積極的展開)、
    5. 経済界による日欧関係強化(ミッションの派遣等)への期待、
    が主な議題となった。

  5. 欧州各国情勢説明
    1. 欧州連合(EU):木村大使
    2. ユーロは順調に導入されたが、財政政策との連携や、税制の調和、欧州会社法の整備等の課題が残る。また、EUは競争力強化のため経済構造改革に取り組むほか、外交・安全保障面でも、外交政策の統一や、緊急展開部隊の整備、欧州警察や欧州逮捕状の検討などを進めている。中東欧10ヵ国とのEU加盟交渉は年内に合意される見込みであり、EUの将来像に関する検討も始まった。国際社会におけるEUの存在は今後も増大し、日本企業への影響も増すと思われる。官民が協力してEUへの働きかけを強化する必要がある。

    3. フランス:小倉大使
    4. EUの拡大は一様ではなく、加盟条件も国によって異なる。拡大の結果「2つのヨーロッパ」が生まれる可能性もあるので、今後の動向を見極める必要がある。3月のポルトガルの総選挙、5〜6月のフランスの大統領、国民議会選挙、秋のドイツの総選挙等が、欧州の政情や経済政策の行方を左右するのではないか。

    5. ドイツ:野村大使
    6. ドイツ経済は昨年度停滞し、失業率も上昇した。今年度の経済見通しも厳しい。今後の景気や失業の動向が秋の選挙に大きな影響を及ぼすであろう。駐独日本大使館および総領事館は、日本企業の事業環境を改善し、駐在員の生活上の便宜を図るために最大限努力するとともに、ドイツからの対日直接投資の促進にも努力している。

    7. 英国:折田大使
    8. ブレア政権はユーロ参加を支持しており、2003年6月までに国民投票実施の是非を判断しよう。世論はユーロ参加に否定的だが、政府は為替リスクやポンド高の問題を認識しており、政府の努力次第では参加が承認される可能性もある。その場合、実際にユーロ参加が実現するのは2005年〜2006年となろう。英国政府はEUの将来に関する議論に積極的に参加し、日本との二国間関係の強化にも熱心に取り組んでいる。

    9. チェコ:石田大使
    10. トヨタ自動車のチェコ進出で、チェコと日本は一層身近な存在となった。EU加盟交渉に伴い、一連の改革が進んでいるが、投資優遇措置は加盟後も継続される。今後もEU、ポーランド、ハンガリー等の大使館と連携して日本からの投資促進や研究開発拠点や技術の移転に取り組みたい。年末には天皇陛下のチェコ訪問も予定されており、文化広報も強化したい。

    11. ルーマニア:三橋大使
    12. ルーマニアは後進性の故に、最もEU加盟交渉が遅れているが、それもEU加盟を通じて克服されよう。ルーマニアのEU加盟はバルカン地域の安定に加え、EU市場拡大の視点からも有意義である。EU加盟に向けて投資・事業環境は改善されつつあり、日本からの先行投資を期待する。

    13. ポーランド:上田大使
    14. ポーランドは2004年のEU加盟を目標に、農業政策や補助金、加盟後の投資優遇措置の継続等、残された問題の交渉を進めている。ポーランド政府は投資誘致に努力しており、ポーランドには若くて良質な労働者も多い。対露関係も良好でロシア向けビジネスも可能である。日本企業の進出を期待する。

  6. 意見交換(要旨)
  7. 経団連側:
    EUの将来像に関する検討が進まない場合は、拡大も遅れるのか。
    木村EU大使:
    将来のEU像については意思決定のあり方等が課題だが、EU拡大は既定方針であり、2002年中の合意が可能である。

    経団連側:
    京都議定書の批准をデンマーク等が拒否しているようだが見通しはどうか。
    高橋駐ウィーン国際機関代表部大使:
    日本は京都議定書の発効、米国の説得に大きな役割を果たしている。引き続き、経済成長と両立する地球温暖化対策の推進に努力する。
    内藤デンマーク大使:
    デンマーク国会は議定書の批准を既に承認しており、残された問題はEU域内での排出量の割当である。

    経団連側:
    CIS諸国の状況はどうか。
    中山ウズベキスタン大使:
    ウズベキスタンはアフガニスタンと国境を接し、アフガニスタン問題では重要な存在である。同国には、第二次世界大戦後に日本人が抑留された。現在抑留者墓地の整備を進めているが、当時の抑留者の働きは目覚しく、今も対日感情は極めて良好である。同国は治安がよく、天然資源にも恵まれている。日本企業の進出を歓迎する。
    森カザフスタン大使:
    カザフスタンは豊かな石油資源を有し、資源安全保障の観点からも重要な国である。「シルクロード外交」の一環として、経済外交に加え、平和のための外交も強化したい。

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