農政問題委員会企画部会(部会長 松崎昭雄氏)/2月12日
当部会では、今後のわが国農政のあり方に関し検討を行っているが、具体的な提言を行ううえで、各地の生産者の経営状況や特色ある取組みなど、農業生産の実態を把握することが重要である。そこで、秋田県十文字町認定農業者会の金沢隆志会長を招き、農業・農村が直面する現状および課題などについて説明をきくとともに、意見交換を行った。
私自身は、地元十文字町で7.2haの水田と1haのさくらんぼ畑を耕作し、冬期はハウスで野菜を栽培している。水田の3分の1は他者から借りて規模拡大したものであるが、転作面積の拡大によって、借りた分が水田として使えず、残りは土地代だけ払って休ませているのが現状である。
15年前から、農業を営む人口が10分の1に減少するのではないかと言われていた。わが国では農産物が国際価格の何倍にもなっており、農業が甘やかされていると言われ続けてきた。しかし、農業界では産業界よりもはるか以前からリストラが進行している。専業農家で生活可能な人口が激減しており、農村の疲弊は深刻である。
とりわけ1993年暮れ、GATTのウルグアイラウンド交渉妥結により、コメのミニマムアクセスが始まり、その後、関税化が実施された。そうした中、コメの専業農家が最も大きな打撃を被っている。米価の低迷および生産調整面積の増加とともに農業所得が落ち込み、秋田県平均では、1994年の約175万円から1999年の約86万円へと半減している。農業所得の落ち込みに呼応するように税収も落ちており、地域経済に与える影響は極めて大きなものになっている。
コメ農家については、拡大した生産調整分の農地全てに手が回らず、不作付地が増えているという問題に対処しなければならない。また、農村の活力減退によって、若者の農村離れに拍車がかかり、地方の商工業などにも影響が及んでいる。
農家の努力不足との批判はあろうが、「国内地産地消」、「適地適作」の観点から、産業界には、農産物自由化や積極的な輸入拡大を考え直してほしい。また、経団連をはじめとする産業界と、農協、農林水産省が定期的な会合を設け、農政のあり方についてよく話し合ってほしい。