経団連くりっぷ No.167 (2002年3月28日)

なびげーたー

地球温暖化対策のあり方と新大綱

環境・技術本部長 高橋秀夫


地球運温暖化対策推進法と大綱の改正作業が進行する中で、環境と経済の両立、民間の創意工夫からはさまざまな問題も浮かび上がっている。

2月4日に小泉総理が所信表明演説で京都議定書の批准と国内対策の準備を約束して以来、急ピッチで地球温暖化対策推進法と大綱の見直しが進行している。法も大綱も今月中に閣議決定され、改正法は5月中に国会を通過しないと8月下旬から開催されるヨハネスブルクの地球環境サミットでの議定書の発効が難しくなる。

一方で京都議定書に米国が参加せず、中国、インドの将来参加も約束されない中で、アンブレラ・グループを構成していた豪・加・露の動向が不透明になっており、早期批准を打ち出すことへの疑問も各方面で指摘されつつある。

閣議決定に先立って行われた3月13日の関係審議会合同会議では、今井会長が出席して以下の5点を申し入れた。

第1に、新大綱で明らかになる部門別目標は一定の試算に基づく目安であり、産業界の自主的取組みを最後まで尊重すべきである。第2に、地球温暖化は地球規模の問題であり、地方公共団体による独自規制はなじまない。第3に、京都議定書の削減目標達成には革新的技術開発が不可欠であり、国策として技術開発を支援すべきである。第4に、米国の温暖化対策新提案を踏まえ、京都議定書と一本化した国際的枠組みの構築に向け政府がリーダーシップを発揮すべきである。第5に、京都議定書の遵守に法的拘束力が与えられないよう毅然とした外交交渉を展開する必要がある。

経団連では以上の合同審議会での意見陳述ばかりでなく、山本環境安全共同委員長、桝本地球環境部会長を中心に与党政府関係者に対し精力的に働きかけを行っている。その結果、19日の地球温暖化対策推進本部で決定された新大綱は当面産業界への影響を回避できたものになっている。具体的には、京都議定書の6%目標を達成するには産業部門でCO2の排出量を1990年比7%削減する必要があるが、新大綱では経団連の自主行動計画(産業は1990年比0%)の着実な実施を前提として、自主行動計画にない追加的需要対策と新エネ、原子力、燃料転換からなる追加的供給対策で7%を達成することとしている。

また、地方も国の計画を総合的に勘案するよう求められており、独自規制に一定の歯止めがかかっている。

今後は米国をはじめ各国が参加できる枠組みを構築できるか、技術開発を適切に支援できるかなどが大きな課題になってくるが、京都議定書をめぐってはまだまだ、さまざまな展開が予想される状況が続くと思われる。


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