経団連くりっぷ No.167 (2002年3月28日)

第576回常任理事会/3月5日

教育改革への取組みについて


教育のあり方はわが国にとって極めて重要な問題であり、経団連では、従来より教育をめぐる諸問題について検討を行い、新たな時代にふさわしい教育・人材システムの実現に向けて積極的に取り組んできた。そこで、文部科学省で鋭意進めている教育改革の取組み状況について、遠山文部科学大臣、岸田文部科学副大臣より説明をきいた。

  1. 遠山文部科学大臣説明要旨
    1. 教育改革の推進
    2. (1) 21世紀教育新生プラン
      活力ある国づくりの観点から教育の果たす役割は非常に重要であり、英米の先進国のみならず近隣諸国でも、教育改革を国家戦略の第一の課題として取り組んでいる。
      わが国では、現在進められている小泉内閣の構造改革に一歩先んじて昨年当初から教育改革に取り組んでおり、そのポイントは「21世紀教育新生プラン」に位置づける、次の7点である。
      第1は、一方的に教えるスタイルから、わかる授業による基礎学力の向上、第2は、多様な奉仕・体験活動による心豊かな日本人の育成、第3は、保護者にとって子どもたちを安心して預けられるような、楽しく安心できる学習環境の整備、第4は、各学校における自己評価システムの導入等、父母や地域に信頼される学校づくり、第5は、研修の充実や指導力が十分でない教員は他職に転職させる等、教える「プロ」としての教師の育成、第6は、世界水準の大学づくりの推進、第7は、新世紀にふさわしい教育理念の確立と教育基盤の整備、である。

      (2) 「生きる力」の育成
      今年4月から、新学習指導要領に基づく新しいカリキュラムと「完全学校週5日制」が始まる。新しい指導要領のねらいは、基礎基本をしっかり身に付けた上で、自ら考え、課題を見つけ行動することができる子どもを育てることである。これをきっちりと実現させていくのは、われわれの責務である。

      (3) 確かな学力の育成
      本年1月、「確かな学力向上のための2002アピール『学びのすすめ』」を公表した。
      最近公表された「生徒の学習到達度調査」(OECD調査)の結果では、知識の面での学力については、日本の子どもは国際的に見て上位にあるものの、最も高いレベルの総合読解力を有する生徒の割合はOECD平均と同程度であり、「宿題や自分の勉強する時間」が参加国中最低である。また、国際教育到達度評価学会(IEA)の調査でも、数学・理科について日本の生徒は成績は一番であるが、「自分で勉強する時間」や「数学や理科が好きである」、「将来これらに関する仕事に就きたい」と思う子どもの割合は、国際的に見て最低レベルであった。
      知識を与えることも大事だが、学ぶ意欲の育成も大切であり、次の5つの方策に取り組むこととしている。
      第1は、少人数授業・習熟度別指導等、きめ細やかな指導で、基礎・基本や自ら学び自ら考える力を身に付けること、第2は、発展的な学習で、一人ひとりの個性等に応じて子どもの力をより伸ばすこと、第3は、総合的な学習の時間等を通じて、学ぶことの楽しさを体験させ、学習意欲を高めること、第4は、放課後や朝の時間を活用して、学びの機会を充実し、学ぶ習慣を身に付けること、第5は、学力向上フロンティア事業等により、確かな学力向上のための特色ある学校づくりを推進すること、である。

      (4) 教養教育
      本年2月、教養教育のあり方に関し、中央教育審議会は「新しい時代における教養教育のあり方について」を答申した。ここでは、生涯のライフステージに即した教養教育のあり方を示しており、国語力の大切さや、価値観、社会規範、教養を身につけることの大切さも指摘している。

      (5) 心の教育の充実
      今の青少年の心に、善悪の判断、我慢の心が育っておらず、小さい頃から、学校だけでなく、家庭等社会全体も含めて、心の教育に取り組む必要がある。そこで、体験学習を通じて、自分で実感を持ちながら心の豊かさを養うとともに、他者との触れ合いの中で集団のルール等の社会性を身に付けるようにしていく。

      (6) 大学改革
      大学のあり方は、わが国の将来を決める極めて重要なことである。昨年6月に公表した「大学の構造改革の方針」に基づいて、各大学の統合・再編、民間的発想の経営手法の導入を進めるとともに、世界最高水準の大学の育成に向け、「世界的教育研究拠点の形成のための重点的支援」に取り組んでいる。一方、大学院では、真にプロフェッショナルな人材の育成に向け、ロースクール、ビジネススクールのみならず、理工系人材の育成等を強化する。

    3. 科学技術創造立国の推進〜産学官連携
    4. 科学技術創造立国を目指す上では、基礎研究が大切であり、特に国として力を入れるべきものは、ナノテクノロジー・材料、ライフサイエンス、情報通信、環境等の重点分野の研究である。これに加えて、宇宙、原子力、海洋等、わが国の基盤となる分野についても重点的に研究開発を進めていく。
      一方で、研究成果を活用するシステムづくりも大切であり、産学官連携には特に力を入れていく。今後、大学には、優れた教育や研究を実施するだけではなく、これらを通じて社会に貢献していくことが求められる。

    5. 高校生の就職問題
    6. 今日、各企業は大変厳しい状況にあるが、高校生の就職に対して、いろいろと工夫し、その機会を与えてほしい。わが国の活性化のためにも、子どもたちに夢を与えてほしい。

  2. 岸田文部科学副大臣挨拶要旨
  3. 世界各国とも、21世紀は、教育改革を国家戦略として位置付けて取り組んでいる。わが国においても、たくましく、また意欲ある人材なくして、21世紀の発展はない。そのために教育改革を推進し、社会全体が協力して、21世紀の教育を支えてほしい。


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