経団連くりっぷ No.167 (2002年3月28日)

貿易投資委員会総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/3月7日

WTO新ラウンドに対する評価

−ASEAN政府WTO担当者との懇談会を開催


日本政府のWTOキャパシティ・ビルディング・プログラムで日本を訪問したインドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン政府のWTO担当者より、WTO新ラウンドに対する評価について説明をきくとともに意見交換を行った。以下は各国の説明概要である。

  1. ルアムラクサ氏(タイ)
  2. 「ドーハ開発アジェンダ」は、先進国と途上国の双方の関心を盛り込んだものと評価する。農業交渉では、輸出補助金の撤廃だけでなく、貿易歪曲的な国内補助金の削減と市場アクセスの改善を達成することを期待している。また、「TRIPSとパブリック・ヘルス」に関する宣言は大いに歓迎する。ADルール、補助金、相殺関税、漁業補助金の明確化・改善に関する交渉も貿易救済措置の濫用と貿易歪曲的慣行の削減に役立つものと考える。投資ルールが途上国の投資拡大に繋がるとは思えないが、ルール策定については柔軟に対応できる。

  3. アルヤクサマ氏(インドネシア)
  4. 農業については、S&D(特別で異なる待遇)条項の見直しを行い、食料安全および農村開発のニーズを考慮しつつ交渉を行ってほしい。高関税、タリフ・ピーク、タリフ・エスカレーション、不透明な関税賦課は、途上国の貿易の流れを阻害し付加価値製品への移行を困難にしている。非農業産品の関税交渉でこれらが改善されることを望む。投資に関するルールは、TRIMSで十分カバーされている。国内において投資ルールに対する理解を高めるためには、同分野におけるキャパシティ・ビルディングが有益だろう。

  5. アキノ氏(フィリピン)
  6. 新ラウンド交渉では、実施問題とS&Dが最も重要だ。交渉は、途上国の開発支援の観点から進めなければならない。農業は、閣僚宣言で最も重要な部分である。これまで途上国は先進国の輸出補助金により輸出の機会を奪われてきたことから、輸出補助金の削減・撤廃を期待している。非農業産品の市場アクセスでは、途上国が競争力を有する分野に対する非関税措置の削減に取り組んでいくことを期待する。投資については、ルールが経済開発にもたらす利益について説得力ある説明がほしい。

  7. チェマズニ氏(マレーシア)
  8. 市場アクセスは、「ドーハ開発アジェンダ」の中心をなすものである。開発途上国が競争力を有する産品・サービスの市場アクセス拡大がとりわけ重要だ。開発の側面については、技術支援とキャパシティ・ビルディング、S&Dについて、閣僚宣言のマンデートを遂行していくことを求める。途上国に対するフレキシビリティについて定めた規定については運用が実行可能になるようにするとともに、先進国の約束事項を法的に拘束力を持たせることが必要だ。マレーシアが追求する「経済・社会的ゴール」を達成するためには、マルチの投資ルールは特に必要ない。


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