経団連くりっぷ No.167 (2002年3月28日)

産業技術委員会産学官連携推進部会(部会長 山野井昭雄氏)/3月5日

京都大学から見た産学官連携の推進のあり方

−谷垣京都大学国際融合創造センター副センター長よりきく


産学官連携推進部会では、より具体的な産学連携のあり方を検討するため、主要な大学との対話を行っている。今回は、京都大学の国際融合創造センターの谷垣昌敬副センター長(融合部門長)を招き、京都大学の産学官連携の現状や今後の課題等について説明をきくとともに意見交換を行った。

○ 谷垣融合部門長説明要旨

  1. 国立大学の独立法人化や文部科学省による世界最高水準を目指す国公私立大学のトップ30選定等の動きをふまえて、京都大学では、産学官連携の推進に向けて大きく動き始めている。京都大学には、教員・学生あわせて2万名を超える大いなる知的集団が形成されており、大学発のシーズを広く社会へ還元していくことは、重要な使命であるという認識のもと、大学を核とした産学テクノパークの形成やハイテクベンチャーの創出を目指している。具体的には、産学連携担当の総長補佐や、学内横断的な産学官連携検討ワーキングループを設置し、全学的な取組みを加速させている。一方で、京都の桂地区に工学研究科や情報学研究科などの新キャンパスを整備し、テクノサイエンスヒルとして、産学の共同研究等を積極的に推進するインフラを整備している。

  2. 国際融合創造センター(International Innovation Center,以下IIC)は、京都大学における産学連携の推進に向けた中心的な組織として、2001年4月に設立された。国立大学の中では、後発であるが、2002年4月には、専任教官19名、客員7名の合計26名に拡張し、わが国最大級の共同研究センターになる予定である。センターには大学と企業の窓口になる「融合部門」と、ナノテクやバイオ、量子理工学などの先端研究を展開する「創造部門」が設置されている。
    融合部門は技術相談窓口として機能し、産学共同研究のコーディネートや「IICフェア」と称する企業向けポスターセッション、産学連携を促進する各種学内イベントを実施するほか、「包括的研究契約」「戦略的産学融合アライアンス」と名付けた大型の共同研究を推進している。
    従来型の産学連携のスタイルは、大学の一教授と企業の一部門間の狭い連携であり、多くの場合、一件当りの金額も数十万から数百万円単位であったが、国際融合センターがプロデュースする「包括的研究契約方式」では共同研究の目的に沿って、大学内の複数の研究室を組織化し、企業内の複数部門と包括的に共同研究を推進していくことで、短中期のプロジェクトを数千万円の研究規模で推進する。また、「戦略的産学融合アライアンス」では、京都大学を中心に、複数の大学と異業種企業群が連携し、中長期にわたる数億円規模のプロジェクトを推進するもので、すでにロームや三菱化学を始めとした企業群との具体的なプロジェクトが進行している。今後IICは京都大学の全学的な企画立案部門として、学内横断的な活動をしていく予定である。


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