経団連くりっぷ No.167 (2002年3月28日)

シュタイナーIUCN 事務総長との懇談会(司会 阿比留 雄氏)/3月6日

社会的責任を果たす企業が生き残る

−日本企業は自然保護の国際的連携に貢献を


経団連自然保護協議会は、産業団体としては世界で初めて世界自然保護連合(IUCN)に加盟し、協力関係を築いている。外務省の招聘で来日したIUCNのシュタイナー事務局長を招き、同協議会会員との懇談会を開催した。シュタイナー事務局長は、企業をとりまく環境が変化する中で、企業は社会的責任を認識する必要があることを強調した上で、日本企業が自然保護への投資を投資戦略の一環として組み込み、自然保護の国際的連携に貢献することを求めた。

  1. 企業をとりまく環境の変化
  2. 近年、地球温暖化、生物多様性、天然資源などの面で劇的な環境の変化が起こり、エコシステムの存続を危ぶむ声が上がっている。今後100年、200年の間に、完全な崩壊が訪れるという証拠はないが、開発が環境に与えるマイナスの影響に対処するためのコストは、先延ばしにするほど着実に上がる。これまでの開発のあり方が危機に瀕している。
    また1980年代に始まったグローバル化は、当初、そのプラスの側面が強調されたが、5年ほど前からグローバル化への抗議行動が盛んになり、何十万人もの動員力を持つまでになった。こうした中で、企業がいかに社会的責任を果たすべきか、新たなコンセンサスを見出す必要がある。
    国家、民間産業界、市民社会の役割も変化してきている。市民社会が大きな動員力を有し、伝統的なロビイング活動を超えて国家の機能を侵食しつつある。また民間産業界も、商業活動だけでなく、国際経済のルールづくりに影響力を及ぼすようになってきた。

  3. 社会的責任が企業の命運を握る
  4. 国際的な事業活動を行う企業がこうした変化を認識し、ビジネスのあり方を再定義しなければ、グローバル化への抵抗はますます強まるであろう。消費者は社会的責任を果たす企業とそうでない企業を明確に選別し、企業の市場における立場に影響を与える。
    日本企業も世界の消費者との対話・協力を模索する必要がある。IUCNは経団連とも協力して、その架け橋の役割を果たしていきたい。

  5. IUCNの活動
  6. IUCNは生物多様性保護の分野における企業の戦略づくりを手伝い、パートナーシップを組んでいきたいと考えている。企業は投資戦略の一環として、生物多様性保護への投資を組み込んでほしい。近年は、気候変動問題にも取り組み始めている。この分野でも、環境保護論者と企業関係者が協力して、費用効果的な解決策を模索すべきである。
    本年8〜9月のヨハネスブルク・サミットは、

    1. 貧困問題、
    2. 国際機関による環境管理、
    3. 南北間のバーデン・シェアリング、
    4. 持続可能な開発への民間のコミットメント、
    といった課題を達成できるかどうかの試金石となる。持続可能な開発は贅沢ではない。生存のファンダメンタルズである。生物多様性の保護は、経済活動を取り込まなければ成功しない。


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