経団連くりっぷ No.168 (2002年4月11日)

なびげーたー

ブロードバンド時代におけるコンテンツ流通

−簡易・迅速な著作権処理に向けて

常務理事 立花 宏


ブロードバンドインターネットの普及に伴い、ネットワークの中を流れるコンテンツについて、著作権の迅速・簡易な権利処理の仕組みの整備が急務となっている。

  1. 通信料金の低下等を背景に、わが国においてもADSLなどブロードバンド・インターネットの利用者が急速に増大し(本年1月末で約310万人)、先行した米国以上にブロードバンドへの関心が高まっている。昨年1月、政府のIT戦略本部が策定した「e-Japan戦略」では、世界最先端のIT国家となる手段としてブロードバンド・ネットワークの整備が強調され、その後6月の「e-Japan 2002プログラム」において、コンテンツとネットワークは車の両輪であるとの認識のもとで、コンテンツ流通を円滑化するための環境整備を進める方針が打ち出された。

  2. これまで経団連では、IT戦略本部の民間側メンバーである岸副会長・情報通信委員長が中心となって、情報通信分野における自由かつ公正な競争の促進による利用者利益の最大化を目指す制度改革とともに、コンテンツについては無断複製・無許諾配信の防止・監視対策の充実、著作権処理の仕組みの整備などに官民協力して取り組むよう、政府に働きかけてきた。そうした取組みの一環として情報通信委員会のワーキンググループにおいて、どうすれば著作権に係る権利者と利用事業者とが協力して、コンテンツの適正利用と簡便な権利処理が可能な仕組みをつくることができるのか、権利者・利用者双方の関係の団体から話を伺って検討を続けてきた。

  3. その結果、さる2月13日に、経団連の呼びかけによって、作詞・作曲家、原作者、脚本家、シナリオ作家の各権利者団体、レコード・映画・テレビ番組・アニメ・映像ソフトの各製作者団体、民間地上波放送・衛星放送の各事業者団体、日本放送協会、音楽・映像の配信事業者団体、計15団体の賛同を得て「ブロードバンドコンテンツ流通研究会」が発足し、著作権処理の当事者である民間同士で、簡易で迅速な権利処理の仕組みのあり方についての検討が漸くスタートした。最終的には一般消費者の便益の最大化を図り、新たなビジネスの機会の発掘につなげていくのが、この研究会の狙いである。

  4. これまでビジネスの現場から、「既存のコンテンツについては、多くの権利者の方々が関係し、条件も多様で、権利処理が複雑なため、ほとんど再利用できない」という声が多く聞かれた。コンテンツが適正な形で利用されることは、著作権者・隣接権者・実演家にとっても利益になる訳で、著作権利者と利用者の双方がメリットを受ける権利処理の仕組みを構築するため、経団連としても関係者による話し合いが実を結ぶよう、そのための場づくりに協力していく。


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