統計制度委員会(委員長 井口武雄氏)/3月27日
統計制度委員会では、日本経済研究センターの香西泰会長を招き、日本経済が低迷を続ける原因や今後の見通し、GDP統計からみたデフレの解釈などについて説明をきいた。併せて、提言「経済統計の改善に向けてー四半期別GDP速報を中心に−」(案)の審議を行った。
「失われた10年」と呼ばれる1990年代以降の経済低迷については、金融面に原因を求める考え方と、実物面に注目する考え方があるが、私は、実物経済に大きな問題があったと考える。金融面では、不良債権問題は実物経済との関連で重要だが、金融政策の影響は短期的であり、10年に及ぶ経済低迷を説明できない。
高度成長期の日本は、先進国へのキャッチアップに専念できたが、これは1985年に1人当たりGDPが米国を上回った段階で終了した。現在は、高度成長期とは逆に、アジアが日本にキャッチアップしつつある。
通常、生産性が高い先進国では、賃金、物価、為替のいずれも高水準であり、途上国はその逆である。この関係の下では、先進国と途上国の共存が可能だが、いったん途上国がキャッチアップ過程に入ると、低い賃金、物価、為替と先進国に近い技術力を武器に、国際競争で圧倒的優位に立つ。高度成長期の日本がまさにこれだったが、その後、
1990年代以降、日本のGDPデフレータは、消費者物価や卸売物価以上に低下している。特に、民間企業設備投資や公的固定資本形成のデフレータが大幅に下がった。これは、賃金を含めた企業のコスト調整を意味している。現在のデフレは需給要因のみで説明できるものではなく、大きなコスト調整過程にあると理解すべきだ。
資産価格は、バブル期に比べて大幅に下落したが、簡単には回復しないのではないか。日本の地価は、バブル以前から収益還元価格を大幅に上回っており、調整は今後も続くだろう。また、農産品の輸入や海外への工場移転が進めば、土地の需給は一層緩む。株価についても、日本企業のPER(株価収益率)は極めて高く、ベーシックな価格形成に向けた調整は避けられない。