経団連くりっぷ No.168 (2002年4月11日)

第54回九州・山口経済懇談会 /3月14日

民間活力溢れる経済社会の構築を目指して

−九州・山口地域の自律的発展に向けて


経団連と九州・山口経済連合会(九経連)共催の標記懇談会が福岡市にて開催された。当日は、経団連側から今井会長、岸・森下・香西・上島・西室の各副会長、高原評議員会副議長が出席し、約260名の地方経済人参加のもと、九経連首脳との間で活発な意見交換が行われた。

  1. 九経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      大野 茂 会長(九州電力会長)
    2. 昨年4月、九経連は創立40周年を迎え、記念行事の一環として、「21世紀の九州地域戦略−自律的経済圏形成へのシナリオ」を策定することとした。これは、今後の九経連の活動指針となるものであり、策定に当たっては、

      1. コスト削減・効率化やソフト・ハードの組合せによる機能主義の視点、
      2. 九州地域の利点をどのように伸ばすかという発展戦略の視点、
      3. 産業構造高度化やグローバリゼーションにどう対応すべきか、
      という視点を柱に検討した。その結果、中長期的に取り組むべき戦略課題として、
      1. 産業競争力を高めるためのビジネス環境の創造、
      2. 九州地域の強みを発揮する産業集積の強化、
      3. 九州地域の一体的発展と隣接地域ブロックとの連携強化、
      4. グローバル経済化を先導する東アジア経済文化圏の形成、
      5. 地方制度の改革、
      を定めた。今後、九経連としては、「九州は一つ」の理念のもと、九州・山口地域の自律的発展に向け戦略の実現に注力していきたい。

    3. 九州・山口地域の景気の現状
      大野芳雄 副会長(鹿児島銀行頭取)
    4. 当地域の最近の経済指標によると、生産活動や設備投資、公共投資などの落ち込みが激しく、完全失業率については、全国平均の5.1%に比べ高い水準の5.7%に達している。また、個人消費の抑制傾向に加え、米国同時多発テロに端を発する沖縄への観光客の減少や狂牛病問題による鹿児島、宮崎の畜産産業の落ち込みなど、地域経済への深刻な影響が見られる。さらに、九州経済調査協会では、九州・沖縄8県の実質経済成長率について、2年連続のマイナス成長を見込んでいる。
      政府においては、構造改革、総合デフレ対策の着実な実行と、今年度補正予算と来年度予算の切れ目ない執行が求められる。当地域の自律的発展のためには、域内の交流と連携を深めるのに不可欠な九州新幹線や東九州自動車道などの高速交通体系の整備、地域連携軸形成のための海峡横断プロジェクトの早期設備など、社会資本の整備が必要である。

    5. ITアイランド九州の構築に向けて
      石井 幸孝 副会長(九州旅客鉄道会長)
    6. 日本の国際競争力低下が指摘される中、競争力向上に向けて克服すべき課題は多い。当地域では「ふくおかギガビットハイウェイ」等が運用開始され、地域情報化の基盤が整備されているが、インターネット人口や各企業における情報化への対応などは、他地域に比べ立ち遅れている。
      九経連では、「九経連ITアクション・プラン報告書」を取りまとめ、地方自治体・ベンチャー企業との連携強化などの視点から14のプランを提案している。具体例としては、九経連と韓国・全経連との協議により、福岡県と釜山との間の約250kmを光ファイバー海底ケーブルで結ぶ、日韓IT光コリドー・プロジェクトがある。
      九経連としても、域内の情報化を推進し、アジアとの連携強化も視野に入れ、競争力ある「ITアイランド九州」の構築に向け、積極的に取り組んでいきたい。

    7. 当地域における新産業育成への取組み
      江副 茂 副会長(東陶機器会長)
    8. 新たな雇用の創出を行い、当地域が自律的な発展を遂げるには、地域特性を活かした新産業の創出を図り、国際競争力のある産業構造への転換が重要な課題である。九州地域では、福岡LSIカレッジの開設、半導体ベンチャー協会の設立等の地域の特性を活かした取組みが進められている。
      また、九州地域の環境産業の市場規模が現在の2.3兆円から2010年には3.9兆円に、雇用規模も同じく約10万人から14万人へと拡大すると予測されている。特に北九州では、自動車、ペットボトル等のリサイクルの他、医療用具等のリサイクル産業が発展し、環境産業の拠点化が進んでいる。
      新産業の創出に当たっては、研究開発機能を持った知的生産拠点をいかに形成するかが鍵を握る。また、アジアとの連携を深化させ、国際分業体制を視野に入れた産業構造への転換を図ることが重要である。

    9. 日韓ワールドカップサッカー開催と当地域の国際化
      安藤昭三 副会長(大分銀行会長)
    10. 本年5月に、ワールドカップサッカーが開幕するが、九州で唯一開催地に選ばれている大分県には、試合開催3日間で約13万人の訪問客が見込まれており、地元では大会の成功に向けた気運が盛り上がっている。ワールドカップを機に、県境を越えた観光ルートをつくって九州全体の観光振興を推進しなければならない。
      また国際交流では、互いの歴史・文化を総合的に理解することが重要である。2000年4月、アジア太平洋地域の交流拠点を目指し、立命館アジア太平洋大学が別府市に開校し、世界約70カ国から900名以上の留学生が学ぶ国際大学として全国的にも注目を集めている。2004年には最初の卒業生が出ることになるが、多くの留学生が九州に定着してもらえるよう、就職しやすい環境を整えることが重要である。

  2. 経団連会長・副会長発言要旨
  3. 今井会長からの挨拶の後、森下副会長より税制抜本改革、西室副会長より社会保障制度をめぐる課題、岸副会長よりIT革命推進について発言があった。さらに、香西副会長より地域の自立と産業の活性化、高原評議員会副議長より新事業・新産業の創出について発言があった後、上島副会長より経済交流拡充への取組みについて説明があった。
    最後に今井会長から、九州におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、新しい経済団体として構造改革の推進に向け取り組んでいくとの総括があった。


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