経団連くりっぷ No.168 (2002年4月11日)

第30回中国地方経済懇談会/3月15日

構造改革の推進と新たな中国地域の確立に向けて


経団連・中国経済連合会(中国経連)共催の標記懇談会が宇部市において開催された。地元経済人約170名の参加のもと、経団連側は今井会長、片田・上島・西室の各副会長、高原評議員会副議長が出席し、中国経連首脳と意見交換を行った。また、懇談会に先立ち、今井会長および高須中国経連会長らは、長州産業を訪問し、最先端の超高真空技術を活用した半導体製造装置等を視察した。

  1. 中国経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      高須司登 会長(中国電力会長)
    2. 中国経連の景気動向調査によると、中国地方の景気を悪いと回答した企業の割合が96%に達する厳しい状況にある。国民が構造改革に伴う痛みに耐えるには、改革後の将来像を具体的に示す必要がある。
      新たな中国地方の確立に向けて重要なことは、

      1. 地域産業の再生、
      2. 地域ブロックにおける広域連携、
      3. 地方分権への対応、
      である。1. については、新製造技術や環境等の新たな成長分野で新事業・新産業を創出していく必要がある。2. に関しては、中四国の一体的発展を目指す「三海二山交流圏構想」等、地域ブロックにおける広域連携の推進が求められる。3. については、税財源配分や公共事業のあり方等、国と地方の関係を見直し、地方自らも行政の効率化、重点化に取り組むことが重要である。

    3. 地域経済の現状と課題
      田中耕三 副会長(山口銀行頭取)
    4. 他地域同様、中国地域でも産業の空洞化が懸念されている。とりわけ中国の台頭による国内生産の縮小を受け、下請企業の受注減など、地域経済に深刻な影響が及びつつあり、情報化・グローバル化の流れの中で、地域の内発的な発展が求められている。
      山口県の産業構造は、工業出荷額の約7割を占める素材型産業に特化しており、県では、こうした特徴を環境関連分野に活用したゼロ・エミッション型の地域づくりを推進している。また県内では、産学官連携による新産業創出・新事業展開支援も行われている。例えば、山口ティー・エル・オーは、中国地域唯一の技術移転機関として、大学等の研究成果を特許の形で産業界へ移転する等、知的資産の活用を進めている。

    5. 地方の自立に向けた社会基盤の整備
      大下 龍介 常任理事(福屋社長)
    6. 中国経連では予てより中・四国地方の一体的発展を目指す「三海二山交流圏構想」を提唱してきた。その主旨は、1,200万人の人口を抱える中・四国地方において、東西のみならず山陰・山陽地区の南北軸の交流と連携を通じ集積を高め、力強い経済文化交流圏を形成しようとするものである。
      小泉内閣では、財政構造改革のもと、高規格幹線道路整備計画の見直しに着手しているが、ナショナルミニマムとしての社会基盤整備に対する考え方には相当の温度差がある。中国横断自動車道をはじめ高規格幹線道路の施行命令路線については、計画的かつ早期の完成が望まれる。

    7. 産学官連携の推進
      牧 征滋 常任理事(中国電機製造社長)
    8. 中国地域は多様な生産財供給と世界に誇る高度加工技術の集積を背景に、20世紀における日本の経済成長を支えてきた。今後は、新たな知の創造・活用により、新たな需要・産業を創出することが課題である。本年2月開催の中国地域産学官連携サミットでは、「中国地域発展のための産学官連携マスタープラン」が採択され、地域が一体となった広域連携の推進等がうたわれた。
      中国経連としても、広域連携推進の観点から、産学官交流やネットワークづくり等の取組みを強化している。また、こうした連携を推進する上で、税制改革、規制緩和、産業インフラの整備等が必要である。

    9. 中国地域の情報化の推進
      西村憲一 常任理事(西日本電信電話取締役広島支店長)
    10. 今年度、中国経連では企業のIT活用に関する実態調査を行い、現状と課題を分析している。中国地域は他地域に比べ強い製造業が存在していることが強みであるが、反面、情報化の面で既存系列企業の変革スピードやニューエコノミー創出の速度が遅く、地域のソフト産業が育ちにくいという弱みを抱えている。
      こうした課題に対応する上からは、経営者層の意識改革、専門人材の育成、ITへの投資等に重点的に取り組むとともに、ブロードバンド通信分野に係る規制の見直し等、規制緩和を検討する必要がある。

    11. 都市機能の充実・向上
      古市 大 理事代理(トミヤコーポレーション社長)
    12. 岡山・倉敷都市圏は137万人もの人口を有し、

      1. 豊かな自然環境、
      2. 2時間移動圏に1,640万人の人口を抱えるという交通結節点としての都市の利便性、
      3. 歴史の古さ、
      が共存するユニークな生活文化圏を形成しているが、都市圏としての一体性や求心力に欠けている。そこで中国経連が中心となり、同都市圏と共通事項が多い米国ミネソタ州ツインシティーズ(ミネアポリス市、セントポール市)を範に取り、「ツインシティーズ岡山・倉敷中枢拠点都市圏構想」と名づけ、「新たな文化・価値の創造と発信を行う21世紀を先導する地方中枢拠点都市圏」という将来像を描いている。今後、同都市圏を活性化させるべく、都市機能整備の進め方などを検討していきたい。

    13. 自由懇談
    14. 古谷博英常任理事(宇部商工会議所会頭)より山口TLOなど山口における産学官の連携、大谷厚郎観光振興副委員長(一畑電気鉄道社長)より、中国地域の観光振興の取組みについて説明があった。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 今井会長からの挨拶の後、片田副会長より会社法制の課題、西室副会長より社会保障制度をめぐる課題、高原評議員会副議長より新産業・新事業の創出、上島副会長より経済交流拡充に向けた取組みについて説明があった。
    最後に今井会長より、中国地方におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として構造改革に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。


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