経団連くりっぷ No.168 (2002年4月11日)

新入会員代表者との懇談会(司会 和田龍幸事務総長)/3月12日

新入会員代表者より当会に対する率直な意見・要望をきく


経団連では、新たに入会した会員の代表者から、各企業・業界の当面する課題や要望等をきき、活動に反映させている。当日は新入会員代表者7名および今井会長、和田事務総長ほか事務局役員4名が出席し、率直な意見交換を行った。

新入会員代表者発言要旨

  1. 日本環境認証機構
    福島 哲郎 社長
  2. 当社は1994年に設立された民間初の国際規格ISO関連の機関である。
    近年、企業倫理が問題となっている。経団連が1991年に地球環境憲章を発表したことにより、企業の環境問題への取組みが急速に進んだように、企業倫理についても、国際規格を定めようとの動きがあり、本年6月にはこれに関する国際会議が開催される。倫理や社会性は、その国の歴史・文化に根ざしたものが多く、欧米中心の考え方により規格が作成される恐れがあり懸念している。品質システムや環境マネジメントのように、経団連が中心となって指針を取りまとめ、国際的な動きに反映させてほしい。

  3. 東京リーガルマインド
    反町 勝夫 会長兼社長
  4. 当社は、司法試験をはじめとする各種国家資格取得のための指導機関で、職業訓練、IT訓練の受託など、資格取得とキャリアアップ・サポートを幅広く行っている。
    昨年、政府が発表した改革工程表に基づいてリサーチしたレポートを当社が発表したが、未だ地方自治体の法規制が緩和されておらず、規則や省令の壁にはばまれ必要な予算を執行できないケースが多い。また、日本の専門職は、縦割りで受身になっている。より実務密着型にすることにより、高付加価値型製品の開発に取り組める体制に組替える必要がある。地方分権と民間移管を進めて、外交や経済等に携わる国家公務員を国際機関に積極的に派遣してはどうか。
    企業活力の拡大には税制改革が必要不可欠である。企業やそこで働く人々が自己投資・自己啓発をしやすくなる改革を行うとともに、高齢者が有する資産をもっと経済活動に活かせる税制をつくることが重要である。

  5. マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ
    藤井 卓也 会長
  6. 当社は保険、投資顧問、人事コンサルティング等の分野で世界的な展開を行っている子会社を傘下に持つ米国企業である。人材を資源とし、資産を持たないため、情報をデータベース化し、顧客ニーズを整理・蓄積することにより、有用なサービスを提供している。
    活力ある社会の条件は、自由と安全にある。経団連は、規制撤廃とより低コストな危機管理を政府等に働きかけてほしい。
    安全の確保と損害の減少を、予め手当てすることが当社の役目である。新しいリスクも生じており、ビジネスを進める上で、当社のノウハウが役に立てば幸いである。

  7. ジャステック
    神山 茂 社長
  8. ソフトウェア情報会社は、株主欄の業種区分がサービス業から情報通信関係に変わる見込みとなった。事業の実態がより的確に伝わることになるため、大変喜ばしい。
    ソフトウェア業界は、12兆円を超える産業に育ったが、ほとんどが国内の顧客から仕事を受け、国内の顧客に仕事を納める内国型産業である。また、最近はパッケージソフトを中心に、外国製品が伸張している。
    わが国は、自動車や電子部品などが海外市場で好評価を得、外貨を獲得している。21世紀は情報産業が時代の中心となろうが、その分野で国際競争力を維持し、外貨を稼げなくては、日本経済は衰退してしまう。経団連は、ソフト分野も含めた情報産業の国際競争力強化につき、積極的に取り組んでほしい。

  9. インターネットイニシアティブ
    鈴木 幸一 社長
  10. 当社はわが国初のインターネット サービス会社で、IIJの略称で呼ばれている。
    米国市場で株式を公開しているが、ディスクローズ面での日・米間のギャップを強く感じる。また、日本でも上場しようとすると、未公開株という扱いとなってさまざまな制度上の制約があり、前例がないだけに難しい面がある。証券市場の国際化といった面からも、制度あるいは運用といった面で検討すべき課題として研究してほしい。
    IT戦略会議等において、情報通信政策についての経団連の考えをきくと、後追いの印象を受ける。問題は、情報戦略について経営トップにその重要性に対する認識が欠けていることや、専門的な知識がないということもあり、CIO(情報担当役員)の存在もなく現在に至っている企業が多いことにある。今後の情報通信政策は、企業自身が米国に比べ大きく遅れをとっている現実を認識し、その上でビジョンをどう打ち立てていくかにかかっている。

  11. メリルリンチ日本証券
    川島 健資 副会長
  12. メリルリンチグループは、41年前に日本に進出し、3年半前には個人業務にも進出した。法人・個人部門、投信投資顧問を合計すると、日本においては、総勢約2,000人の陣容で事業を展開している。
    当社では、業界事情等に精通した調査部門を有し、証券会社の役割である資本市場の活性化を図りながら、一方で株主価値の極大化を探るべく、事業を展開している。
    経済界の構造改革やリストラを進める上で、当社のノウハウ等が役に立てば幸いである。経団連入会を機に、これまで以上に日本に根付いた活動を展開していきたい。

  13. 総合メディカル
    小山田 浩定 社長
  14. 当社は医療機関を対象に機材等のリースやコンサルティングを行うとともに、調剤薬局の運営を通じて、医療現場の一翼も担っている。
    わが国の医療費は、年間1兆円前後増加しており、在院日数の長さや医薬品費の比重が高いという問題を抱えている。欧米に倣い、ジェネリック薬の普及をはかる必要がある。
    薬剤師の職能をより有効に活用することも必要だ。わが国では、医師が患者を実際に診察し処方箋を書かないと薬剤師は調剤ができない。しかし一部の慢性疾患等の場合は、患者が直接薬局に行き、薬剤師から薬をもらえれば便利かつコスト安になる。薬剤師の扱う処方箋の数にも制限があり、改善が必要だ。
    クリニック開業には多額の資金が必要だが、医師が高齢で後継者を持たない医院も多いため、第三者が継承できるシステムづくり(D&D)にも取り組んでいる。


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